タケオ

グリンチのタケオのレビュー・感想・評価

グリンチ(2018年製作の映画)
3.4
物事の「本質」を見抜くにはどうすればいいのだろうか。答えは簡単、全て奪ってしまえばいいのである。何もかもを奪い取り、それでもそこに残るもの、それこそが真の「本質」だ。

孤独に育った本作の主人公グリンチ(ベネディクト•カンバーバッチ)は、「クリスマス」とは強欲なバカたちが浮かれているだけの空虚なイベントだと信じている。嫉妬が混じっているとはいえ、薄っぺらくて愚かなイベントをぶち壊してやりたいというグリンチの「破壊衝動」は、ご馳走.プレゼント.装飾品といった上っ面だけのものを奪い去ることで「クリスマス」を崩壊させるという「プロジェクト•メイヘム」へと加速していく。

そう、本作は子供向けの『ファイトクラブ』(99年)なのだ。また、大きな混沌をもたらすことで人間の悪しき'本質'を炙り出そうとする姿は『ダークナイト』(08年)のジョーカー(ヒース•レジャー)のようでもある。クライマックスで「クリスマス」を奪われた村の住人たちが見せたある'行動'に動揺を覚えるグリンチなんて、正に2隻の船が爆発しなかったことに驚くジョーカーそのものではないか。

薄汚れた大人たちほど、全てを失ったはずの「クリスマス」の中でも人間としての「愛」と「優しさ」を証明する住人たちの姿にハッとさせられるはずだ。作中のグリンチの心情と完全にシンクロしてしまい、涙がボロボロと溢れてきた。

「クリスマス」とはご馳走を食べてプレゼントを貰って恋人とラブホへ行く日だと思ってる救いようのないバカどもは、インスタに薄ら寒い投稿をする前に本作を観ろ!そしてクリスマスの「本質」を思い出せっ‼︎

ジム•キャリー版と比べると、最低最悪な市長もいないし、とってつけたような恋愛要素もないから、無垢で純粋な子供でも安心して鑑賞できるはず。それに、『ホーム•アローン』シリーズ(80〜12年)ほど暴力的でもないから、本作の方が断然オススメだ。
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