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ショートウェーブのhorahukiのレビュー・感想・評価

ショートウェーブ(2016年製作の映画)
3.5
短波無線の実験で何かと交信してしまうSFホラー。びっくりするくらい酷評だらけな作品ですが、これまた私的には楽しめました。

あらすじ…
チョット目を離した隙に娘を誘拐された主人公。そのショックが抜けきらず二年が経つ。夫の友人の勧めで、山奥の家に引っ越して来た主人公夫妻。そこでおかしなことが起こり始め…。

『ショートウェーブ』とは短波無線のこと。こういうアナログな無線が何かと繋がるというのは、オカルトチックでめっちゃ好みな題材です!(*^^*)

本作の舞台は山奥に立っている、やけにオシャレで近未来的な建物。そこに主人公夫妻が引っ越してくる。妻は娘を無くしたショックから、明らかに精神に異常を来しており、夫は主人公に前を向かせようと必死になっている。

本作の舞台は「娘の喪失」に囚われ、前に進むことができない主人公の心の牢獄の象徴。不思議な力が働き外に出られないことが何よりも象徴的。何度も挿入される、意味ありげで幻想的な、回想なのか何なのかすらわからない映像からも、現実と妄想の違いすら区別できない主人公の精神異常が伺えるし、そういった主人公目線で物語が進行するので、画面に映るものをそのまま捉えて良いのかわからないという映像への不信頼性が、アートで幻想的な雰囲気を助長してる。そして、セリフや補足演出と言ったわかりやすいものに頼らず、純粋な映像表現として、居心地の悪い牢獄のような主人公の精神状態を映画全編を通して描ききっているのが素晴らしい。

娘は何故奪われたのか。誰が犯人で誰が悪いのか。誰を憎めばいいのか。そういった強い思いと壊れきった心が次第に狂気を生み出し、周りの人間へと向けられていく。真犯人や事の真相なんてどうでも良い。それらの思いが、わかりやすい復讐の対象としての「犯人」、もしくは抑圧され続けた反動としての暴力性の矛先を求める行動にすり替わっていく。娘が無事かどうかすらどうでも良くなるほどの心的倒錯。それくらい壊れきった主人公は見ていて痛々しい。ここら辺は『シャイニング』が描く狂気に少し近いですね。

本作はそこにオカルト(SF)要素を加えてて、主人公の狂気が夫の研究と結びつき、独自のオカルティックな精神世界を構築していく流れは自然で引き込まれるし、オカルト好きには堪らないです♫

ただ眠い!!不眠症の方でも、これ見れば寝れるんじゃないかってレベルで睡眠導入能力が半端ないです。私も何回寝落ちしそうになったか…(^_^;)エンタメとは程遠い、観客を突き放すような作風が本作の評価を落としてる原因だと思いますが、色々と解釈しようがある面白い作品だと思いました。
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