horahuki

千と千尋の神隠しのhorahukiのレビュー・感想・評価

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)
5.0
当時劇場で見て衝撃受けて、それから何度も何度も繰り返し見てきた作品。また劇場で見られたのがほんとに嬉しい!これは個人的な思い入れがあり過ぎるので5.0以外はつけられない!

今回見て思ったのは現実世界を除くと大きく二層のレイヤーに構造的に分かれているということ。わかりやすいお仕事ムービー(社畜ムービー?)としての一層と千尋の精神世界における寓話性の意味合いを強くする二層。そして、ユバーバとゼニーバの内面的表裏一体関係は千尋とカオナシにも見出せるということ。

レイヤーの移行は「海」によって成されるわけだけど、仏教における清濁あわせのむ度量をもつ教えとして考えると「海」こそが千尋の心的状態、そして本作のメインテーマをそのまま体現しているように見える。海化は千尋の度量獲得と同時に起こり、そのまま心的深層を語る二層レイヤーに物語も移行する。

六道の対極的位置に置かれるユバーバとゼニーバの位置関係は、湯屋をメイン舞台とし自身の一面を彼方側に捨て置くことで成立している。そして千尋も自身の中にある欲と弱さの権化を彼方側に置いてくる(+対極のものを獲得する)ことで転生がなる。主体が変われば地獄も天国も真逆になるわけで、清濁あわせのむ「海」となった舞台がここでも活きてくる。

だから本作は自分の心内における「自分」の取捨選択を(捨てる面にも温かさをもって)成長物語として描いたものなのだろうし、それをユバーバ:ゼニーバ、千尋:カオナシにおいて対比的に語る意図があったのでないかと感じた。ユバーバが契約時に語る「こんな誓いを立てるんじゃなかった」というセリフからもユバーバの背景に恐ろしいほどの奥行きができ、欲の化身と成り果てる前(取捨選択前)の彼女の人物像が垣間見える。

欲望の奴隷(別の意味では社畜)たちは同じような顔をしており、「夢」を抱く者はビジュアルに個性があるのも印象的。そんでなによりも、本作が描く何を大事にして生きるのかっていう超真っ当なメッセージは、変な深読みをしなくてもしっかりと受け取れるというのがアホみたいに凄い!そして社畜にはなるなよ!ってメッセージも!🤣
horahuki

horahuki