140字プロレス鶴見辰吾ジラ

スパイダーマン:スパイダーバースの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

4.6
【これは僕らの物語】

とんでもない作品が生まれてしまった!
アニメ映画史に残る一作であろう。
アニメ映画界の「プライベート・ライアン」だ。
とにかく胸がときめいた。

冗談を言ってるかもしれないが…
3DCGアニメーションにコミックの一幕のようなセリフが現れて、主体を中心に回り込むカメラワークの戦闘シーンの中で作画の爆破シーンが出てきたり、高低差を生かした落下シーンと飛散するガラス片のファンタジーの情報量の以上に多いアニメワールドへのトリップが堪らなかった。ここに主人公の黒人スタイルのブラックスパイダーマンをメインに多様性のため?スパイダーウーマンのお出ましから、アニメ的な多様性をぶち込んだ白作画のスパイダーマンノワール、日本式アニメ画のペニー・パーカー、さらにスパイダーハムは古き良きアニメーションのハメ込みだ!

マジでイカれてやがる!
マジで否応なしにアガる!
アニメーション快楽の濁流だよ、これ!

ただ映像美だけで勝負するなら、技術の進歩とともに周回遅れにされる嵯峨があるだろうが、本作のスパイダーバースは予告にて「これはマイルスの物語だ。」と言われている。この意味が予告では分からなかったが、劇中に別世界から飛び込んでくるスパイダーマンたちを見ていてハッとさせられた。ユニバースを基調とするアベンジャーズに対して、本作はマルチバース方式。つまりはスパイダーマンは1つの世界に1つ=孤独な存在なのである。だからこそ中盤でマイルスが蜘蛛の糸を別世界のスパイダーマンとシンクロ的な動きで繰り出すシーンでエモーションが大きく向上するのである。そして孤独がゆえに他者に理解され得ぬ大事な人の死を、マルチバースで宿命を背負っている別世界のスパイダーマンと共有することにより、孤独<仲間がいるということを認識し、一気に映画も感情もマイルスも飛翔するシーンへと雪崩れ込む。ある種アニメーションに潜む宗教性も後押しして、本作はマルチ世界のマイルス=主人公=ヒーロー、マルチ世界のヒーロー=自分自身にも備わる可能性と解釈していくと、誰もが孤独であり、傷ついていて、そしてヒーローになる素質があるのだと脳内世界も飛翔していく。

我々は孤独にして大いなる仲間もいるのだと勇気づけられてからの序盤の伏線をエモーショナルに回収していく手際の良さも含め、何より「愛してる。」の稲光に打たれるような感動に本作は最高!へと駆け上がることとなる。今世界はディズニー帝国の正しさの植民地にされていて、多様性を認めつつも上級層のみが自由を手に入れる不条理を突き付けらているような不安の中で、マルチバースに想いを馳せられる希望的な反抗的なスタイルがフリースタイルなアニメ(3DCGや作画、劇画調)の共鳴して、我々の心は飛翔していたのだ。ありがとうスパイディ!俺たちは苦難に負けない!