円柱野郎

15時17分、パリ行きの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

2015年のフランス、走行中の列車で発生したテロ事件。
偶然にも同列車に居合わせていた米国人青年3人の行動を追った実録ドラマ。

"3:10 to Yuma"(邦題「決断の3時10分」)を思い出すようなタイトルだけど、西部劇とは関係ない。
実際の事件の再現ドラマと劇映画の狭間にある様な感じで、殊更にドラマチックにもサスペンスフルにも描かないし、群像劇にもできるネタなのに、そういうこともしない。
テロ事件を描いてはいるけども、それも単に主人公が遭遇した事件でしかなく、テロリストはテロリストという記号で背景には全く触れることはなかった。

では何が描かれるのかというと、彼ら“普通の若者”がその時に行動をしたという事実だけ。
なので映画のほとんどは彼らが特別でもなんでもなく、自分たちと同じ地平で彼らなりの境遇の中で考えて過ごす若者だという事を、日常を淡々と見せることで感じさせる作品になっている。
でもそこに意味があって、普通の人だからこそ、とっさにテロリストを取り押さえるという行動の崇高さが際立つし、考えさせられもする。
主人公3人は役者ではなく本人が演じていることも、この話の主人公が普通の人々であるという主題を表しているよね。

そこに居合わせることは運命かというニュアンスも描かれはするけど、それは隠し味くらいのものかな。
重要なのはその時その場所で正しい行動をとった人がいた、という事実。
いつどこでテロが起こるか分からない世の中で、そういう希望を描いた作品なのだと思う。
円柱野郎

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