小松屋たから

1987、ある闘いの真実の小松屋たからのレビュー・感想・評価

1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)
4.4
韓国の映画は社会や政治をエンタメ性を保ちながら描くのが本当に上手い。市民の力が社会を変えていくストーリーはやはり素直に胸を打つ。それが史実に基づいているとなればなおさらだ。

映画としての構成も素晴らしい。主要登場人物が章立てのように変わっていくが決して誰かを放り出すことなく、それぞれの物語がいつの間にか集まって大きな一つの渦を生み出し、やがては観客までもその中にのみ込んでいく。最後は自分も集会に参加している気分になった。これだけのスケール感で映画が作れる国がすぐ隣にあるということが、日本人としては羨ましく思うことも事実。やっぱり韓国映画は凄い。

でも、邦画にも邦画の強みがあって、それは、もっと個人の内面の苦しみに繊細にフォーカスできるところだ。日本の映画は対照的に自分の周囲半径何メートルかの人間関係を描くのが上手い。常に地続きの国境を意識せざるを得ない状況にある国と、そうではない国の違いなのだろうか。

いずれにしても、両国に素晴らしい映画がどんどん生まれていくことを願う。綺麗事じゃなくて、政治的衝突が激しくなる一方のこの時代、エンタメが体を張って国境を越えないと本当に大変なことになるかもしれないと思うからだ。