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オンネリとアンネリのおうちのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

3.5
もうね、あれだ、オープニングからしていきなり完璧。あまりに近く寄りすぎて輪郭を失った淡いピンクのバラの花びら、みずみずしいきみどりの茎と葉、クレジットタイトルの文字列を自在に飛び交い気ままにさえずる小鳥の姿。この時点で既に最高かと。

原作が児童文学と聞いた途端に合点がいったのですが、これは、絵本そのものというよりむしろ、くすくす笑いと手招きでもって実際に絵本の中までついてきてごらん、と目配せされているかのような錯覚もしくは体験を伴う作品と呼べるでしょう。夢のように美しい景色と陽射し、この世のものとは思えないほど愛らしくも身近な憂いを抱えた少女たち、本当の意味での悪人がただの一人も存在しない優しい世界。ずっと昔、かつて自分が周囲の大人たちの完全なる庇護下にあった頃のしあわせな記憶が蘇りました。鼻もほっぺもどこもかしこもまんまるなオンネリ、くりくりおめめときらきら輝くブロンドのアンネリ。いつでも一緒のふたりはまるで双子のようで、互いの寂しさを埋め合う運命共同体のようにも見えました。

それにしても、まあ、あれだ。前述のとおり児童文学がベースとなっているだけあって、大人の濁った目で見てしまうと突っ込みどころが多すぎるというか「警察の勤務体制って」「食品の衛生管理って」「そもそも二人の両親がアレすぎて」などと様々な雑念が脳裏をよぎって仕方ないのですが、自分の場合はわりと早い段階から脳内でそれらを「細けえこたあいいんだよ!」と一喝してやりすごすことにしました。これが正解だと思う、たぶん。

この「細けえこたあいいんだよ!」の精神は今年あたまに観たバーフバリで拓いた悟りの境地とも呼べるもので、そうかインド神話と児童文学の突き抜け具合は概ね同じと言えるのだな、と新たな気づきを得た次第であります。ベクトルは真逆だけど。
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