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ボーダーライン:ソルジャーズ・デイのbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督がメキシコ麻薬戦争最前線の一幕を描いた『ボーダーライン』(原題:SICARIO)の続編。
前作では、主人公のケイトの心理描写が物語そのものでしたが、今回は趣を変えて、ロードムービー&複数視点で展開します。


今回は、"不法移民手引きの黒幕である麻薬カルテルを混乱させる"というお仕事のため、前作に引き続きマット(演:ジョシュ・ブローリン)とアレハンドロ(演:ベニチオ・デル・トロ)が再度作戦を実行します。
展開的にはあまり起伏がなく、先もしばしば予想できるものではありましたが、新たな視点として登場したメキシコ系アメリカ人の少年ミゲルの物語との合流は良かったです。
前作からの重く静かな雰囲気を維持して作られたことや、アレハンドロの抱える過去への言及や、マットとの関係性等はだいぶ深まりましたが、一方で目新しさ・オリジナリティはそこまでございません。
地続きな物語であり、続編という枠組みにおいて、前作から大きな逸脱を見せる必要がないから、といのは勿論ありますが。
ただ、それもあってか、あまり印象深いシーンもなかったというのが本音です。

強いて「お?これは?」と思ったシーンを挙げるとすれば、学校でのケンカ後、教師に叱られるシーンでしょうか。

このシーンでは、カルテルのボスの娘イザベル・レイエスが、自分をヤク売りの娘の売女と馬鹿にした少女を、学校でボコボコにします。
結果、教員(校長と思しき人物)の部屋にてお小言を食らう羽目に。
この時の、イザベルと殴られた少女の座席配置にご注目ください。
教師目線の正面からのカットと、その逆の背面からのカットで、座席の配置が入れ替わってしまってます。
教師の位置を基軸にすると、どう考えてもイマジナリーラインにズレが生じてます。
カメラアングルによって席上のアイテムの配置もズレてきますので、「このシーンのために何度も撮影してるんだなぁ」と実感が湧きました。

内容には全然触れていませんが、アレハンドロがミゲルのもとを訪れる本作のラストは、戦争が終わることなく続いていくことを匂わせてくれて、とても好みです。
欲を言えば、邦題が原題からよりかけ離れてしまった感がありますので、そこをどうにかしてほしかったなぁ……。
「兵士の日」と邦題のボーダーラインがミスマッチに思えてなりません。
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