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万引き家族のKKMXのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

警察の尋問を受ける信代の言葉、
「棄てたんじゃない、拾ったんだよ」
これが本作のすべてを表しているように感じました。

万引き家族は、みんな棄てられた人たちなのでしょう。
治は祥太に自分の真の名前をつけました。自分を祥太に重ねて、経験できなかった父親の愛を体験したかったのだと思います。信代も治も棄てられた自分を救うために、祥太やリンを拾ったのではないでしょうか。

社会的に見れば、彼らは間違った家族です。実際、祥太のケガ以後に夜逃げをする姿を見れば、精神的なつながりもどうなのだ、と疑問も湧きます。
しかし、万引き家族には、家族として絶対に必要なものがありました。

それは団欒です。
みんなでカップ麺とコロッケを食べたり、リンの好物を理解しておふを食べさせたり、見えない花火を見たり、海に行ってジャンプしたり…
団欒が存在していたという意味では、万引き家族は真の家族でした。
このような日々があったからこそ、祥太は成長できたし、リンは海の絵を描くことができました。つまり、万引き家族には愛があったのです。
(責任はなかったけどね…)

信代はひとりで罪を被り収監されました。そこで吐いた「お釣りがくるよ」の言葉は真実でしょう。お母さん、とは呼ばれませんでしたが、お母さんとしての仕事は果たしたように感じました。信代は治と祥太、リンを救い、自分自身をも救ったのだと思います。愛されない、愛せない、自分の存在に価値を見出せない苦しみを生きることに比べれば、ブタ箱生活など「お釣りがくる」程度のものでしょう。


印象的なシーンもたくさんありました。団欒の場面はもちろんすべて良かったのですが、海遊びシーンは本当に安らかで喜びに満ちていました。俯瞰シーンがすべからく感動的で、夜に治と祥太が広場でジャレ合ったり、花火を眺めたりする場面は、なぜか胸に迫りました。
中でも白眉は、亜紀と4番の交流シーン。言葉にできないほど美しかったです。孤独な魂同士が惹かれ合い、一瞬繋がる姿には、えもいわれぬ切なさと煌めきがありました。

悪役的な存在の尋問役ですが、なかなかの名言も吐いています。
祥太に学校に行く意味を尋ねられた警官が、少し考えてから、「仲間ができるから、かなぁ」と答えました。家族も大事ですが、家族の外の仲間たちも大切なんですよね。特に祥太くらいの年頃の子どもにとっては。これは名言だったと思います。

しかし、是枝監督は乗ってますね。三度目の殺人から1年経たずにこのレベルの作品をドロップするくらいですから。いやはや感服いたします。


最後に、本作で最も複雑な気持ちになったのは、リンのラストでした。近い将来、ぜひリンにはスイスに渡ってもらいたいです。フォンテーヌ園にてシモンやアリスが待ってますよ!
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