茜

エンジェル、見えない恋人の茜のレビュー・感想・評価

エンジェル、見えない恋人(2016年製作の映画)
3.8
恋愛ものの映画やドラマは普段進んで観る事は殆どないけれど、
この作品はFilmarksでのレビューを見て面白そうだったので興味が沸いた。

透明人間の男の子「エンジェル」と、盲目の少女「マドレーヌ」の恋愛物語。
これだけだとファンタジーのように思えるけれど、いざ中身を観てみると、
生々しくてリアルな描写が多く、時に官能的だったり、妙に肉体的だったりもして面白かった。
映画は殆ど透明人間エンジェルの視点で映されており、時折画面の上下がぼやけたり、画面全体が霞んだりするので、
「今、エンジェルが瞬きをしたんだな」とか「泣いてるんだな」といった本来見えないはずの彼の表情がこちらにもしっかり伝わってくる。
幼いエンジェルが母親のお乳を飲んだ時に、母親の乳房がリアルに動くシーンにも驚いたけど、
何よりエンジェルとマドレーヌのラブシーンが普通の映画よりも妙にリアルでいやらしかった。
「素っ裸より下着姿の方がいやらしい」と言うのをたまに聞くけど、そういう感覚と少し似てるのかも。

ストーリーは、まさにこういうのを純愛と言うのかなと感じるようなお話で、
臆病になるエンジェルの気持ちも、愛する人を受け止めようとするマドレーヌの健気さもリアルに伝わってくる。
劇中の登場人物はエンジェルの母親、エンジェル、マドレーヌの3人しか殆ど出て来ないうえに、
出てくる景色もほぼ暗い病室か、林の中か、マドレーヌの家の中だけで進んでいく。
余計な人物や景色は極力排除して、少ない人物と狭い景色の中で作られた物語だったからこそ、
恋する2人の気持ちに焦点が当てやすく、感情移入しやすかったのかもしれない。
工夫を凝らした美しく生々しい映像に、シンプルで分かりやすいストーリーという絶妙なバランスがとても良かった。
茜