ヨーク

アナと世界の終わりのヨークのレビュー・感想・評価

アナと世界の終わり(2017年製作の映画)
3.7
面白かったは面白かったんだけど思ってたのとはちょっと違うなという感じでした。
いやもっとバカ映画というかヒャッハーな感じで歌って踊りながらゾンビを殺しまくるようなそんなノリなのかなと想像してたんだけど俺の想像よりはずっと真面目な映画でしたね。バカバカしいけどバカではないと思う。そんな微妙なニュアンス。青春の影の部分がしっかりと正面から描かれていて、メインのキャラクターたちは現状に不満を持ってこんなしょうもない毎日からは抜け出したいと思ってるんだけどいざゾンビパニックが起こって非日常がやってきたとしても彼らの人生が変わるわけではない。いや、まぁ変わるんだけど彼らが望むような良い方向には変わらないんですよ。当たり前だけどね。破滅は救いになんかならない。この映画を貫いている感覚として、退屈な日常は確かにぶっ壊れたけど、5分後には死んじゃってるかもしれない世界ならまだ退屈な日常の方がマシだったかも、という身も蓋もないまともで真面目な感覚がそこかしこにあったように思えます。まぁ基本コメディなので真面目とはいえ気楽な真面目さですけどね。
あとやっぱ全体的にチープですね。そこは予算の関係でしょうがないんだろうけど色々チープ。ゾンビまみれになった街の全景とか軍隊とゾンビとのバトルとかは全く描かれない。そんな金ねーよってことなんでしょう。ミュージカルシーンのダンスもいまいち揃ってなかったりする箇所もチラホラ。ミュージカルといえば楽曲は命だけどそれも狙ってるのかどうなのか、良く言えばシンプルなんだけど安っぽい感じもする。しかしその辺は狙ったのか偶然なのかは分からないけど悉くこの作品にはビッタリとハマっていて奇跡的と言ってもいいくらいのハーモニーを奏でていると思います。上述したようなつまんねぇ冴えない高校生活にそういうチープさがピタピタとパズルのピースのように嵌って馴染んでいくんですよこれが。高校生の一人称的な妙なリアリティだと言ってもいいと思います。一高校生からしたらゾンビ軍団と軍隊のバトルなんて視界には入らないし、プロじゃないんだからダンスも合わせられねえよ、楽曲もチープ? むしろ田舎の学生が好んで聞いてそうな感じで真実味あるじゃん、といった具合に低予算であるが故のショボさはこの映画にとっては全てが追い風になっている感じがするんですよね。
世界中の映画マニアが熱狂! みたいな文句で宣伝を打っていたと思うけど確かにこれは映画好きには響くと思いますよ。年に2~3本くらいしか観ない人にとっては単なる低予算のショボい映画かもしれないけど、映画好きには妙に愛されるだろうなというそういう雰囲気はあります。
あとゾンビ映画としてもちゃんと真面目にポイントは抑えていて首は飛ぶし血もドバドバ出るし好感持てますね。
ひたすらアホな映画を期待したら閉塞感漂う十代の雰囲気が思ってたのと違うんだけど、物語としても割と真面目でゾンビ映画としても正統派なものであって、いい意味で感心して劇場を出ました。
面白かった。
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