小松屋たから

アナと世界の終わりの小松屋たからのネタバレレビュー・内容・結末

アナと世界の終わり(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ゾンビでミュージカルで青春でクリスマス、となると、なんかものすごく弾けてぶっ飛んだ作品を想像していたが、思っていたより普通。もちろん、状況は「普通」ではないけれど 笑

でも、映像を創る人って本当にみんなゾンビが好きだなー。ゾンビものっていうだけで、低予算で日常に異世界を創り出せるし、何か設定が甘くても色々許されてしまうところがあるからだろうか。

鬱屈した感情を抱えて外に飛び出したいという気持ちを抱えているイギリスの田舎町の女子高校生。ある日、世界が変わり…

勝手に紐解くと、ゾンビが旧態依然の町や学校の空気や古い考えの持ち主の比喩で、彼女はそこに毒されず、満足せず飛び出していった。しかし、その先の人生に何が起きるかはわからない、その選択は必ずしも正しいとは限らないよ、ということで良いのだろうか。

ゾンビになる=多数に紛れる、平凡に過ごす。その方が楽かもしれないが、それは、若者にとっては生きながら死んでしまっている(まさにゾンビ)と同じこと。あとで後悔するなら動いた方がきっといい。自分は特別な何者かでありたい…

生き残った=町から出て行った若者たちの人選が、なるほど、と思わせられた。父親との確執を克服して新しい世界を求めた主人公、ある苦しみを抱え居場所を求めてあがいている女の子、力や富への野心を隠さない男の子が旅立った。逆にあのゾンビ化する仲良しカップルはさしづめ学校卒業後、東京に出ず地元に残って結婚するという堅実な道を選んだ同級生といったところか。

最後の三人のこわばった表情は、ゾンビへの恐怖というよりは、まさしく、現代の若者たちが抱える将来への不安そのものを映し出していた。「死」を初めて身近に感じた彼らはきっとこれから貪欲に「生」を求めて行ってくれるだろうと思いたい。

音楽はノリも良くて、主人公が自己中心的に歌っている背後で町がバンバン壊れていったり、ボウリング場で頭部が飛び出してくるなど、いかにもイギリス映画らしい、ブラックコメディ要素、グロさが適度にまぶされ、エンタメとしては楽しめる。

でも、この映画のゾンビはあまり強くないし、歌っている間は待ってくれる心の優しい奴らなので(笑)、そちら方面の強烈な刺激を求める方には、物足りないかも 笑