八木

クリード 炎の宿敵の八木のレビュー・感想・評価

クリード 炎の宿敵(2018年製作の映画)
2.6
 前作のほぼリブート大成功を踏まえ、「今度の因縁はドラゴっしょ!」という部分から先行させて作ったということですかね。その結果、1の次は4なのね、という、少なくともボクシングに関する結末が完全にばれている状態(ていうか1の結末がああなんだから当然2はこうだよねという予測ができる状態)での、ライバルとの明確な体重差がとんでもねえ足かせになってる映画でした。これミスキャストちゃうんすか。
 ボクシングって、3~4キロ刻みで階級が分けられていて、計測の際はオーバーしていたらスポーツマンシップに抵触するとみられるくらい、ボクサーの危険度が変わってくる競技だし、一説には「あらゆる格闘家の中でヘビー級のボクサーが一番強い」といわれるくらい、パンチに破壊力があるといわれておるわけです。調べたら、90キロオーバーからがヘビー級なんだってね。
 そこにきて、マイケル・B・ジョーダン、プロフィールでは182センチ69キロだそうです。相手は前作のコンラン同様、ルーマニアの現役プロボクサーを起用しておるようで、190センチ111キロだそうです。例えじゃなくて死ぬ。俺でもわかる。マイケル即死する。もちろん、そらあもうマイケル鍛えまくってて、試合前筋肉キレまくっておりましたよ。体重もプロフィールより相当増やしてるんでしょう。それでも、リングに二人上げて見ますと、「マイケルすぐ死ぬやん」とずっと思ってました。何が肋骨だよ馬鹿。ワンツーで死ぬよ。ちょっとギャグ的ですらありました。

 もちろん、そういう逃れられない危惧は、文脈でカバーしていただければ何も問題はないと思うのですが、映像にしたときの即死感のド迫力からは逃れられなかったということもそうですし、ヴィクターのキャラ立ちについては甘く、わかりきってるとはいえ結末への興味は持続できなかったかなあと思うわけです。
 と、言いますのも、「4」におけるイワン・ドラゴって、調べてないから想像で書くしかできないのですが、イワンのキャラ自体が冷戦下におけるロシアの国に対するイメージの擬人化であって、一種エスニックギャグみたいなところがあったと思うんですよ。機械的に拳を振り続け、アポロをぶっ殺した退治されてしかるべき悪として、単純化されてしまってた。だから、倒してしまうことに語るドラマも見つけやすかったと思います。
 じゃあ今回はと言いますと、あんまりライバルであるヴィクターの背景について踏み込みすぎると、今回アドニスがどう試合を運ぶかについてエンタメ的に気持ちよくない影響が出てしまうと製作側が思ったんでしょうね。すげえ絶妙に軽いバランスでヴィクターの人間性を薄く描いて、ラストをロッキーの名曲集でバゴーンと水に流して気持ちよくするほうに振り切ってたんです。その結果、僕みたいな人間が見ると、少なくとも試合には興味を持続して見ることができなかったんですよ。ヴィクターは、登場時からずっと、映画的に都合のよい存在として描かれ続けていて、最後までライバルなのにどうでもよくなっていました。もうこれ、結末大体書いてるようなもんだな。すいません。でもボクシングの結果が重要な映画じゃないですからね、当然。あとついでに、ヴィクターが持っている数少ないドラマに、母親のことがあるじゃないですか。あの母親の描かれ方自体も、すげえインスタントな感じしませんでしたかね。わかりやすい人だったのよ。

 脚本にはスタローンの名前が出てきていることから、僕は「ハハア、エクスペンダブルズとか大脱出的に、『ドルフ・ラングレンとオレ』で同窓会のエロさを優先したな」と思っています。実際、スタローン目立つところちょっと多かったのよなー。エンディングの感じとかさ。いや、そら目立っていいタイトルの映画ではあるんだけど、勘ぐってしまう。でもさー、エイドリアンズに会いに来たドルフとの会話シーン、語ったこと自体『知るか』って内容だったんですよね。少なくとも、息子のキャラ立ちに強く貢献してるように見えなかった。あれって、同窓会のエロさだと思うんですけどどうでしょ。

 クリードが2015年のロッキー1として、シリーズファンへの目配せとボクシングや人物の立て方に現代性を帯びさせることに成功していたのに対し、クリード2はロッキー過去作への目配せが荒唐無稽さとして強く残ったうえ「めちゃくちゃヘビー級の奴と全然そうでない奴」を殺し合わせて不思議な結末へと導くまったく珍奇な味わいの映画になっていると思いました。
 そういった珍奇さを素直に受け入れることができれば、主人公やその周囲が人間的に成長していく映画として感動することができると思います。僕は無理でした。

 ただねえ、最終的にロッキーシリーズのあの曲とか流されますと、何か良かったと思えたのも正直なところです。クリード1を見終えた直後に今作を鑑賞したこともあるので、時が経てばまた感想も変わるかもしれませんが。
八木

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