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HOSTILE ホスティルのhorahukiのレビュー・感想・評価

HOSTILE ホスティル(2017年製作の映画)
3.4
砂漠のド真ん中で車が横転。
足も骨折。救助は来ない。
ひっくり返った車の中で、異形の怪物からの襲撃に拳銃一丁で一晩耐えなければならない主人公を描いたソリッドシチュエーションスリラー。

滑り込みで見てきました!
『美女と野獣』だとか『シェイプ・オブ・ウォーター』だとか異形と人とのラブストーリーが最近流行ってますね。本作もジャケの通りそっち方面。

本作の製作ザヴィエジャンは今年『コールド・スキン』でカエル人間と人との恋愛を描いてたし、そういうの好きなんかな。変態が多くて映画界も安泰ですな。

あらすじ…
謎の化学兵器のせいで人類のほとんどが死滅してしまった世界。燃料や食料を求めて砂漠でひとり車を走らせていた主人公。仲間たちが待つ本部へ帰ろうとしていた時に脇見をしてしまい車が横転。気がつくと足を骨折しており、無線は繋がらない。そして車の周りを異形のモンスターがウロついていて…。

横転した車の中という狭すぎる空間で異形に襲撃されるという、かなり絶望的な状況。あの手この手で異形の襲撃から耐え忍ぶところはなかなかスリリング。狭すぎる空間+ひとりというシチュエーションなので、話がそれほど膨らまないわけですが、本作は過去回想をアホみたいに頻繁に挿入することで、アイデア不足を補っている。

多分、実際の世界でアポカリプスは起きてなくて、本作は主人公の心の中の葛藤を描いた寓話だろうと思います。心の奥底で燻っている罪悪感と後悔。本作は、その象徴である、とある人物の幻想を打ち砕き、また弱い自分をも一緒にぶち壊すことで主人公が再生する物語。まさに主人公の人生における「never give up」。

だからこそ、あの場に誰も助けに来ないし、主人公と異形以外には記号的な人物しか登場しない。舞台が夜であり、夜明けの光とともに終幕を迎えるというのも象徴的。だから本作で描かれるのは主人公への心的試練であり救いでもある。あの人の写真によってこの状況に陥ったこともそれを表してると思います。

でもねー。主人公の回想がある程度進んだところで何がしたいのかがわかってしまうんですよね。そのせいで、それ以降の物語への興味が削がれてしまうんです。あとフランシスベーコンについて語るシーン、わかりやすいけど本旨とズレてるような。本作はそんな表層的な話じゃないと思うんだけどなー。

内容的には回想シーンが非常に重要なのですが、そこで描かれる主人公たちのキャラクターや関係性があまりにもテンプレ的というか、描写が浅くてイマイチ響いてこない。めちゃくちゃ時間割いてる割には、それほどの効果をあげられてないように思うんですよねー。しかも、この回想ドラマのせいで本筋のスリラーパートの緊迫感が途中から全部削ぎ落とされるという共倒れ。回想の多用はスリラーパートのアイデアを思いつかなかったがための言い逃れ的に見えてしまう。

ちなみにザヴィエジャン監督作『死霊院』が今年12月(私のところは来年1月)にMDGPで公開されるのですが、流行りに乗りまくったパクリ邦題がある意味清々しい。本国での評価も微妙だし、MDGPのホラーは去年も残念だったので、多分ポンコツでしょうね(^_^;)どっちにしても見に行きますが(笑)
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