ゴトウ

ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンスのゴトウのレビュー・感想・評価

3.9
ヴィヴィアン・ウェストウッドと聞くとどうしてもマルコム・マクラーレンやセックス・ピストルズを連想してしまうけど、そういうロックンロール絡みのスター関係なくヴィヴィアン自体がすごくかっこいいスターだった。最後にランウェイに出てくるヴィヴィアンはおばあさんになってようが関係なく、どのモデルよりかっこよく見えた。80近いおばあさんが「お元気」とかそんな言葉とは程遠いエネルギーで動きまくってる。
「未来への懸念が私の原動力」って語る場面があるんだけど、パンクが生まれた時のロンドンの不景気も温暖化で北極の氷が溶けるのも彼女にとっては同じなんだというところが感動的で、それだけにジョニー・ロットンを「いい歳なのに未だに過去の栄光が忘れられない」と切り捨てるのも(どっちが正しいとかではなく)かっこよかった。インタビュー前の神経質そうな感じとかはロットンに似てる気がしたけどね。反面、セックス・ピストルズについて質問されたときには「その話をするのは辛すぎる」と本当に悲しそうな顔をしていてちょっと泣いてしまった。ピストルズ好きだからあれは来るよ…。
現在の夫(こいつ徹夜明けなのか酔っ払ってインタビュー受けてんのか?)が完全にヴィヴィアンの才能と人格にのぼせ上がってる(しかも10年以上!)のは本人が語るまでもなく丸わかりだし、同じようにヴィヴィアンを愛したマルコム・マクラーレンが才能への嫉妬でおかしくなっていくのもうなずけた。とにかくヴィヴィアンが創造性に溢れてるし魅力的すぎる。逆にヴィヴィアンがマルコムに対して「私が追い越してしまった」「彼に知的な魅力を感じなくなった」と語るのは残酷すぎるけど本心からそう感じているんだろうし、今の夫も彼女の刺激にならなくなったら平気で捨てられかねないなと思えた。なんというか、ずば抜けた天才とペテン師は並べたら一目瞭然だし本人たちがそれを一番わかるんだろうな。わかっててもヴィヴィアンみたいな人のこと好きになっちゃうよねきっと。勝手にマルコムの気持ちをわかる気になってしまう。
金儲け的にも憧れ的にも人が周りに集まって来ざるを得ないんだろうなっていう中で、特にグラサンのイタリア人(ヴィヴィアンウェストウッドのCEO)は絵に描いたような胡散臭い男だった。でもこういう人がいないと天才も食いっぱぐれかねないだろうし、それこそピストルズにはマルコムがいなくてはならなかったように、この人は絶対必要なんだろうなと感じて好きだった。有名人あるある第1位で息子がやっぱりバカそうなのも最高です。
一切ピストルズの曲も流れなかったけど、観終わってからは流す必要もなかったなと感じた。タイトルは”Punk,Icon,Activist”だけど、パンクの象徴とかそういう位置にヴィヴィアンはいないし。そういう文脈でヴィヴィアンの名前を意識したのは確かだけど、ロックパンクの文脈に収まる人物じゃないとわかったし、全くそんなこと思ったこともなかったけどヴィヴィアンの服一枚くらい持ってみたいと思った。買えないし着こなせないけどさ。とりあえず「自分の思想を語るためにパンクファッションがあった」という言葉を聞いたから、絶対に女王の顔がプリントされたTシャツは着ないことにした。僕は女王に恨みとかないし、憧れてヴィヴィアンみたいな格好してたら一生ヴィヴィアンみたいにかっこよくはなれない気がするので。
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