わたがし

愛しのアイリーンのわたがしのレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
5.0
 いつも理性的な優しい眼差しで人間を描き続ける吉田恵輔監督だけど、今回は、特に後半から一気に理性が飛んでて、念願の実写化って言うぐらいだから相当この原作好きだったんだなと思った。
 いつものごとく観てるこっちが恥ずかしくなるぐらい地に足がついている日常描写でじわじわ物語に観客を巻き込んで、そっからのフィリピン行くくだりの「日常の延長」感のどうしようもない上手さ。観光ビデオになりがちな海外ロケでもしっかり映画になっているという、ありそうでなかなかない邦画の奇跡。パチンコのパを抜いて言うと面白いとかそういうクソみたいなギャグも吉田監督の手にかかればあっという間に絶品おもしろギャグになる。しみじみと天才だなあと思った。
 クライマックス、マジでオチが予想できないまま物語が二転三転し、最後に映画として崩壊してでも「これは描くべきでしょ」っていう私情で尺が延びてる感じが何とも味わい深いというか、こういう部分に関しては『ヒメアノ~ル』のエンタメ感から逆走して『机のなかみ』を連想させるなあ、とか思ったり。上手く映画を作ろうとしてるのか私利私欲を優先してんのか完全にわからないのが吉田作品の魅力なんだよなあ
 こういう若干浮足立ったようなストーリーでもちゃんと現実にある物語として落とし込める吉田監督、ヒリヒリするのは『犬猿』だけど、こっちも本当にジメジメ来る作品だった。早くSFとかガチホラーとかジャンルもの撮ってくれないかなあ
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