あすとろ

オズランド 笑顔の魔法おしえます。のあすとろのレビュー・感想・評価

3.8
「人に“笑顔”になってもらう」そんな一つの信念に対して愚直に行動する仲間たちの物語

新入社員の波平 久留美(なみひら くるみ)、ワクワクしながら彼女を待っていたのは地方遊園地への転勤命令だった。
そこには小塚 慶彦(おづか よしひこ)という“魔法使い”と呼ばれる天才社員がおり、期待に胸を膨らませるもののゴミ拾いやお客様の案内などの簡単な雑務ばかり任される。
そんな事に嫌気がさしつつも波平のやる事なす事失敗だらけで未熟さを実感するがお客様の笑顔に触れる事でやり甲斐を見つけ始める。
そしてある日小塚の秘密を知り……というストーリー

邦画ではよくあるお仕事奮闘劇、な内容ですが割と数少ないタイプの作りかつ色んな人に響くステレオタイプな内容になっていて結構観やすく楽しめた映画でした!

現代っ子な波平は所謂、失敗知らずなお嬢様な感じなキャラクター像ですが実は今時の現代人像を忠実に描けているなぁと感じてやりたい事、目標に一直線型で目先での判断、関係のない業務などには一切やる気が起きなくいつしか心の炎は消えて辞めたくなる、諦めてしまうという現代っ子像はネットやSNSなど人と簡単に繋がれる今の世代だからこそ簡単に人と比べやすく人生を生き急ぐ、最短距離での成功を求める若者の特徴を過剰過ぎず上手く柔らかく描けているなと感じました。
本編で波平が「私、早稲田卒なんですけど」とセリフを言うシーンがあります。
日本の悪いところではあるんですが根強く蔓延る学歴社会を生き残るため有名大学を卒業したと感じさせるセリフです、波平の言動が有名大学の割には応用力や知的な素振りはないので「肩書きだけなんだな」と感じさせやすいところで非常に見事でした。

本作はある種、現代風刺作品でもありますが見事なのは「心さえあれば誰でも人を笑顔にさせれる!」というメッセージを持っている事。
波平の同期の吉村も東大卒ですが「暖かい仕事がしたい」という事で研究で蓄えた知識という武器を手放しグリーンランドにやってきます。
逆に天才社員の小塚はヒッチハイクでのらりくらりとやって来た場所がグリーンランドだっただけ。
「どうしたら楽しませれるか?」「どうすれば目の前の人を笑顔にできるか?」という真っ直ぐな想いがあるからこそ、夢の国程の知名度はないにしても集客率を上げ来た人全員を楽しませれる事に成功しました。
どんだけ不格好でも人間は成長出来る、ということなんです!
その辺の言動やキャラの関係性などは脚本の吉田恵里香さんの手腕が輝いていたなと感じて、吉田さんはお仕事奮闘劇系のドラマや全く異なる立場のキャラ同士のラブコメ系などの作品の脚本を過去に手掛けていました。
どれにも属さないような、でもある種過去に手掛けた作品のミックスのような作品で下手な恋愛模様など入れず敢えてその恋愛が足枷になる描き方をしていて見事に感じました。

どうしても先がある程度読める展開だったり「いやそうはならんやろ」となる部分もありそういうのが苦手な方は好まない作品かと思いますが、それでも終始暖かい空気感で特に社会人として働いてる方は自分の夢を追いたくなったり、ウルっと心に刺さってしまうと思います!
是非ご覧あれ!
あすとろ

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