きまぐれ熊

ヘレディタリー/継承のきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.4
久し振りにゾクゾクした
そもそも何の怖さか分からないのが凄い

ミッドサマーは言っても根本が人間の恐ろしさなので、怖いけどどちらかといえば面白みの方が勝ってた
へレディタリーは色んな種類の恐ろしさが混ざってて蠢いている
アニー役トニ・コレットの顔芸が凄まじすぎてちょっと面白くなった所もあるけどやっぱギリギリ怖い

そして人生において絶対に味わいたくない感情が鮮明な解像度で詰まってる

ストーリーが進むにつれて、オカルト、スプラッター、精神的な闇とちょっとずつ怖さのジャンルがシフトしていくのが見事
その上、ラストまで知ってから見直すと全く違うタイプのホラー映画に変わるところまで含めてよく計算されている
それをジオラマというモチーフで例えてくるのが趣味が悪くて素晴らしい

序盤は何の映画か分からなくてセリフを流しがちだっただけど、ほぼ序盤で背景を推測する為の情報が実は提示されている
緻密に作ってあるなぁ
ストーリーの大枠としては授業のシーンで解説されていた事を軸に考えると理解しやすい
選択肢が有ろうと無かろうと抗えないなら絶望しかないと思うけど、それが外部による力ではなく家族の問題なら、恐怖というより悲劇と言うしかない
2回目に伏線を拾いながら見返していくと確かに大きく印象が変わって見えるものの、結局のところは家族(家系)の問題に帰結していることが分かってくる
なので、ホラーではなく家族の映画だって言う監督の言ってる事もまあ分かる。それにしては怖いけど。何があったの監督。
これ監督の呪いを吐き出すセラピーの一種なんじゃないか。

ミッドサマーで好きだった独特なCGの使いどころは本作でも既に散見される。それどころか満載なくらいで見つけるのが楽しかった
幽霊の表現や、光の反射で表現されている霊障など、現実なのかタダの演出なのかが判断に困る絶妙なさりげなさで度々挿入される

見返すと、心霊現象CG以外にも思いのほかアハ体験的な演出が多かったのに気付けて、楽しいと同時に2回目でも普通に怖い

後はチャーリー役のミリー・シャピロの顔
演技やメイクもあるだろうけど、顔の肉のつき方がどう考えても不健康で精神的にヤバい人間のそれ。凄い存在感とリアリティ
特徴的な顎の輪郭はどうも鎖骨頭蓋異形成症って病気の影響が強いみたいだけど、プレスの写真だと普通に美人なので見せ方と撮り方のパワーもデカそう
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