140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ヘレディタリー/継承の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.4
【地獄のドミノ倒し】

遂に見てしまった…
「ヘレディタリー/継承」
今世紀最も怖いと噂の
「ヘレディタリー/継承」
エグい、ヤバい、容赦ない…
家族という閉鎖空間
家族という呪縛
家族という優しいはずの逃げ場のなさ

冒頭のツリーハウスのキレのある異質のファーストカットから、ゆっくりとフォーカスするドールハウスの部屋の中によるズームアップの描写から、思えばすべてが仕組まれていたのかもしれない。とにかくこの映画は仕組まれている。それをどこで気が付けるかだ…かと言って気がついたとしても、ドミノ倒しの最初の一手がすでに押されていることに気が付く。そんな映画の仕組みである。

とのかく家族設定がヤバい…

元夢遊病で、過去に息子たちを焼き殺す手前までいった母親と、その息子にナッツ中毒で独特の顔をした娘、そして窮地に何も言えなくなる父親から形成された家族と、絶縁した祖母の死と、いきなり物凄い情報量。この情報量がそのままドミノになるのだが、途中に家族を崩壊させるある決定的な大事件が、前記した情報量の多いドミノとしてすでに仕掛けてある。推理小説的に見逃したとしても、前述した大事件はかなりショッキングなことと、そして問題に向き合わない内向化した劇中の彼らが、いたたまれなくどうしようもなさの悲劇という喜劇の火種にも点火している。慟哭と顔の対比は凄まじく身震いする。

上記、家族のドミノ倒し、そして地獄へのドミノ倒しは大事件を経て、まさかの喜劇化、コメディタッチなズンドコ描写すら見せつけてくる。一切コメディとして映されることのないホラー映画なのだが、明らかに別作品の喜劇的場面で見たシーンが出てくる。食事シーンの爆発力は「アメリカン・ビューティ」で見たし、まさかのオカルト丸出しの高齢術シーンは、「アントマン&ワスプ」で見た。前述2作はコメディタッチなのだが、本作は大真面目に事の顛末を描き、何か客観視が振り切ってコメディ化している。後半になればなるほどぶっ飛び展開が加速するものの、音・間・闇の織りなすジェットストリームアタックが恐怖と言う記号化された感情をつるべ打ちの如く我々の感情へと突き刺してくる。いくつかのシーンは、「バカ殿様」のイタズラシーン並みの滑稽さがあるのに、ホラーという枠組みにして怒涛のクライマックスが安っぽい描写に押され負けない堂々とした気迫すら感じてしまう。とにかく音・間・闇、そして家族内での家族的アイデンティティを容赦なく破壊した後に見せる景色は、笑いどころなのだが、表裏一体の恐怖を道連れに脳内に飛び散ってこびりつく厄介な汚れだ。ラストシーンは、もはや勝利だ!勝利したのだ!!と行先を失ったコンパスのような感覚がストレートに映し出したドミノ倒し成功の祝祭だった。