るるびっち

ペンギン・ハイウェイのるるびっちのレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
3.8
少年のイニシエーション(通過儀礼)を描いた作品。
「憧れの女性」「おっぱい」「この世の果て」これらが少年にとっての永遠の謎。なので少年は研究ノートを作って日夜分析する。
この三つに絡むペンギン、海、ジャバウォックを三すくみで作り上げた世界。
SFというより、少年の抱える謎をメタファーとして表現したものだろう。
子供時代には世界は謎に満ちてキラキラ輝いている。それを端的に示すために謎めいたペンギン・球体の海・怪物ジャバウォックを好奇心の比喩として表している。そこに男の子にとって永遠の謎、年上の女性が世界を支配するものとして現れる。

なので一見不思議な世界だが、構造が解れば憧れのお姉さんを経て大人になるという、よくある成長物語。
少年が苦いコーヒーを「苦くない」と言って飲むのは、イニシエーションを通過したことを表しているのだろう。

しかし何故ペンギンなのか?
理屈で言えば、鳥であって鳥(飛べない)でないもの。蝙蝠も同様だ。なのでその二つが出るのは、少年が男であってまだ男でないという謂いなのか。
しかしむしろ、「ペンギン」というものの語感や愛嬌を優先してエンタメキャラとして創出したというのが本音ではないか。その辺が人気作家の鋭い感性ということなのだろう。

ただ宣伝だとファミリー映画なのだが、オジサンにしか実感できない内容ではないか? 子供や女性には意味が解らない気がする。女性自身が、自分の事を男の子から世界の謎の一つと思われているとは考えないだろうから。
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