小一郎

フード・インクの小一郎のレビュー・感想・評価

フード・インク(2008年製作の映画)
4.0
食肉、穀物を工業化するアメリカ農畜産業の問題をあぶりだしたドキュメンタリー。問題の根本原因は、毎度お馴染み、「人命より企業の利益を優先」する資本主義社会の行き過ぎだ。

大企業が支配するアメリカ農畜産業は、効率化の名のもと、安く、早く、大きく(多く)、家畜や穀物を育てることを良しとする。そこには、消費者の健康などという概念はないようだ。

短期間で大きく育てるため、動かないよう狭く、暗く、不潔な飼育環境。家畜はもちろん、そこで働く人間もモノ扱い。南米の不法労働者を使い捨てながら、病気の食肉も混ぜこぜで出荷。

畜産農家は企業から借金をしているから、おかしいと思ってもはむかえない。養鶏農家は借金が50万ドル以上、年収は1万8000ドルが平均的という。

企業の利益を優先する政府は、小麦、大豆、トウモロコシの穀物に支援金を出す。その結果、生産コストを下回る安価な原料が出来上がり、加工食品、家畜の配合飼料、食肉の価格低下につながる。

安く、家畜を大きく成長させるトウモロコシ中心の配合飼料は、一見よさそうに思うけど、実は大きな問題がある。牛の胃袋は牧草を消化するようにできている。しかし、トウモロコシを食べ続けることで、大腸菌が増えるだけでなく、それが変化してO-157を生み出した。

牧草を週5日与えれば、大腸菌は大きく減少するけど、科学(化学)技術によって解決しようとする企業は、食肉をアンモニア殺菌するのだ。

なるほどヤバい、と思うのが、高カロリーの加工食品ほど安いという事実。チーズバーガー2個のお金でブロッコリー1個も買えない。

共稼ぎで余裕のない家庭は、体に良くないと思いつつも、ハンバーガーで空腹を満たす。結果、所得水準の低い層ほど、子供も含め、肥満、糖尿病の人が多いのだ。もはや構造問題。ハンバーガーを食べすぎるヤツが悪い、と言いきれない。

世界の遺伝子組み換え作物市場の90%を握るモンサント。農家が種子を持つことを厳しく監視し、法的手段に訴え、圧力をかける。モンサントはコンピューターの世界で言えば、マイクロソフト。農家はなすすべがないのではないか。

資本主義の先頭を独走するアメリカは、お金を持っている人の意見が通りやすい。大企業とのつながりのある政府や司法の監視の目は鈍い。

結局のところ、安全な食品を食べたければ、消費者が事実を知って、選択するしかなさそうだ。ウォルマートが有機栽培の食品コーナーをつくって、店頭に並べるようになった。彼らの行動原理は売れるかどうかだけど、だからこそ、消費者の行動が重要なのだ。