新潟の映画野郎らりほう

ウトヤ島、7月22日の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

ウトヤ島、7月22日(2018年製作の映画)
4.2
【客観性欠いた一方的目線】


キャメラは被写体直ぐ傍から対象を極大接写し続ける。
結果 目視出来るものは直近に限られ、遠景は悉く展望を欠く。

狭小視野に依り陥る目視情報の不足と裏腹に、銃声 / 叫び といった音響 / 聴覚情報は かなり遠距離の事象も伝達される ―増幅鬼胎として― 。

更に云えば、切り返しの無いワンカットとは 客観性を欠いた一方的目線であるだろう。



上記「ワンカット/極大接写の手法」そのものが、大局俯瞰的視野を持たず 他者(別の目線/考え)を汲まず 一方的目線で物事を決めつけ、また 遠く鳴り響く不確かな恐怖を 熟考精査確認せずに 鬼胎を増幅させる「極右過激思想」の顕現と為っている。

興味深いのは これが加害者目線なら兎も角、被害者目線に対し顕現されている事である。

つまり 恐怖とは伝染し増幅し続けるものであり、他者への配慮に欠けば ―短絡的に決めつけてしまえば― 誰しもテロリストに成りかねぬ事を本作は構造次元で説いている。暴力は写し鏡なのだと。

本作観賞に対しても 一方的視点/被害者立場だけを見るのでは無く、別視点への刮目(何故テロリストがテロリスト化したか)が要求される事は無論である。




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