馮美梅

ウトヤ島、7月22日の馮美梅のレビュー・感想・評価

ウトヤ島、7月22日(2018年製作の映画)
3.8
2011年7月22日にノルウェーで起きたウトヤ島で行われたサマーキャンプで69人の若者が無差別に殺された事件を題材に作られたフィクション。

2011年といえば、そうかあまりこのニュースの事を覚えていないのは、3月に東北大震災があった影響もあるのかもと思ったりした。じゃないとウトヤ島の惨劇の前にも政府庁舎での爆破も含め77人の命が1人の男に殺された事件インパクトあって覚えてないわけがないから。

作品は政府庁舎の爆破からサマーキャンプを楽しむウトヤ島の様子から、突然、銃撃が始まり救助が来る72分間をカヤという少女を負いながら追体験するという手法で描かれています。

前日に同じくネットフリックスで放送されている「7月22日」を見ましたが、こちらはウトヤ島の銃撃に関しては全体の1/3くらいでほとんどはその後の犯人と銃撃を受けて瀕死の状態から助かった男子高校生の物語となっています。その1/3の部分のみをクローズアップしたのがこの「ウトヤ島、7月22日」となっています。

犯人の姿は登場しません。というか出てきてもぼんやりした感じでそれが見ていてより恐怖感が増幅するというか…

それが始まる前、カヤは一緒に参加した妹と喧嘩をしてしまう。妹ちゃんはどうやら反抗期真っただ中って感じ?品行方正な姉カヤに言動に若干うんざり気味。

そんなことがありながらカヤは友人と楽しい時間を過ごしていると、突然、「銃声だ!逃げろ!」という声と逃げてくる人たち。ここでみんなもうパニック。とりあえず建物に逃げるけど、こちらも怖い。誰が何の目的で銃を撃っているのか?何かのテストか?何人いるのか?もう不確かな情報が錯綜する中で建物の仲も危ないということで、みんな一斉に逃げるけれど、狭い島だし、隠れる場所もないし、何より妹の行方が心配なカヤ。

隠れてても、相手がどこにいるのかもわからないし、銃声が近づいてこないことを祈るしかない。自分がもし同じ状況に置かれたらどうするんだろう?

と言っても本当にそんなことがあったら、私は逃げられないのでいの一番に死んでしまうんですけどね(足が悪いので走ることが出来ないので天変地異含め有事があったら一番に犠牲になる予定)でも、走ることができたとすればですけど。みんなの心配をよそに、結局妹を探そうとするカヤ。

そんな時でも死んでいく同じ年齢の人たち。
折角、生き延びれそうな場所に隠れていたのにやはり、じっとしていられない、正義感とか行動的や責任感が強い人間ほど、いざという時こういう場合犠牲になりやすいのかもしれない。いい面もあるだろうけれど、悪い面もあるみたいだ。結局、生き延びれる人間というのは、隠れる場所を見つけてなるべく動くことなくじっと時間の過ぎるのを待てる人。目の前の事ではなく、長期的に物事を見れる人なのかもしれない。

最後はある意味、驚きの結果が?いや、そうかもと思うか…

人生は皮肉なもの…そして理不尽な事…
物語は実際に起きたことだけれど、登場するカヤにしてもサマーキャンプに参加した700人の人たちの話で作り上げた人物。

でも、72分間、観てる私たちは作品としてはあっという間に感じられたけれど、体験した人たちにとってはとても長い時間だったろうし、近くで銃声が聞こえたときには観てるこちらも本当にびっくりと恐怖を感じた。

移民が沢山流入によって起こる様々な問題をはらんだこの作品。
日本でもこれから先全くないとも限らない。
銃での乱射事件は起きにくいかもしれないけれど、実際日本でも無差別に身勝手に殺される人たちがいるし、いつ自分がその一人になるのかなんてわからない。そんなことを考えさせられる作品です。
馮美梅

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