平野レミゼラブル

ソニック・ザ・ムービーの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

ソニック・ザ・ムービー(2020年製作の映画)
4.0
【カルト映画に成り損ねたが、カルト映画に成り損ねて本当に良かった…!】
ソニックのゲームって実はあまりやった覚えがなくて、確か親戚の家かどこかでちょっとやった程度。確かその時はシャチかなんかに追われるステージを延々とやっていましたね。
とまあ、そんな感じであまり思い入れがなかったんですが、最初に出てきた脅威の気持ち悪さを誇るビジュアルにビックリ。これは凄い!!『名探偵ピカチュウ』みたいに動けば可愛いの領域にはゼッテェー至らないレベルに強烈!!
僕は悪いオタクなので「これは現代のカルト映画に成り得るぞ!!」と大はしゃぎして上映日を待っていたのですが、あまりの不評っぷりに製作陣は公開日を延期してまでCGを作り直すことを発表。出来上がったのは普通にゲームに忠実でちゃんと動き回らなくても可愛いと言えるレベルに修正されたものでした。
現代のカルト映画を観れなくなってしまったことへの残念な気持ちもありましたが、まあ修正前で喜ぶのは僕みたいなカルト好きの悪い奴らなので文句は言えず、あと純粋にCG班の人達の労力には頭が下がる思いでいっぱいだったので修正後でも普通に観に行きましたよ。

で、まあ結論としては「何故修正前で一度はGO!サインが出てしまったの???」というくらいに単純に楽しい快作でした。いや、本当、なんで最初はあんなカルト映画みたいなビジュアルで行けると思っちゃったの????

ビジュアルってマジで大事ですね。本作のソニックは幼い時から人里で隠れて過ごしていたということもあって、人との適切な付き合い方もわからないし、すぐに調子こくしで周囲に結構な大騒動を巻き起こしていくトラブルメイカーなキャラクターとして描写されているんですが、最初の気持ち悪い頭身でそれらの行動起こされたらゼッテェー終始イライラしてしまい許せなかったと思いますよ。ちっこくて、コミカルなマスコットキャラとしてのソニックだからこそ全て許容できた感じ。ただ、最初の頭身だとどういう絵面になってたのか全く想像もつかない場面も多かったんで、元のCGバージョンもそれはそれで観たい気はする。酒場のシーンとか、修正前はどうやって成り立っていたのさ。

ソニックのキャラクターはそんな感じで調子が良い小僧で、足も速ければ口もよく回るマシンガントークが小気味良かったのも楽しかったり。ただまあソニック、あまりにサブカルチャーに明るすぎだし、その台詞回しもサブカル知識に絡めた軽口めいたものなんで何度か「デッドプールか?」とは思っちゃいましたけど。そういえば、冒頭から大ピンチな状況を実況しながら、こうなるに至った経緯を辿っていくなんてメタな流れもまんま『デッドプール』そのものでしたね。俺ちゃんは青いハリネズミじゃなくて、黄色い電気ネズミになったのに。
速さ表現として静止した世界で好き放題やるジョジョ三部のDIO様みたいなシーンもありましたが、まあそこは既に『X-MEN』でクイックシルバーがやった演出そのもの(言うて僕は『AoU』のクイックシルバーしか観ていないんだけれども)なので二番煎じではあるけれども、まあ楽しい。ワープできるリングを駆使して敵をあっちに行ったりこっちに行ったりさせたりするのも『マイティ・ソー:ダーク・ワールド』で観たし、ソニックの映画はかなりマーベル映画の面白いとこ取りして作ってる印象がありますね。でも、ソニックが読んでいたのはDCコミックの『フラッシュ』なんだよなァ……

ソニックと友達となるドーナツ卿ことトムや、プレッツェル夫人のマディも特筆するべき部分こそありませんが、サブで十分な見せ場とやり取りをしていましたし、オリキャラとしての役割はバッチリですね。
まあ、ただそこまでだと正直そこそこ楽しいレベルなんですよ。それを十分満足出来たレベルにまで押し上げたのは、エッグマン(Dr.ロボトニック)演じるジム・キャリーの最強の怪演による部分が大きいように感じられます。マジで本作のMVP。最高。
本作のエッグマンは特に世界征服とか考えておらず、ソニックというUMAの科学的価値のみを求めて暴走するという悪と言うより身勝手なヴィランではあるのですが、一挙一動一投足がコミカルすぎてシンプルに面白いです。最初は普通の見た目なのに、どんどんゲームのエッグマンに侵食されていく感じも愉快でしたし、あのコミカルダンスのキレ味は笑っちゃう。性格はマッドなサイエンティストという領域を超えた最悪の一言に尽きるのに、妙に距離感が近く邪険に扱われても健気に付き従う部下のストーンくんとの軽妙なやりとりのおかげでそこまで気にならない。というかストーンくん、あそこまで酷い扱い受けながら一途に尽くす辺り、デキてるんじゃあないか?

「何故被検体が逃げたのは明白なのにここにいる!!」
「博士が心配で…」
やっぱりこのストーンくんの感情、LikeじゃなくてLOVEだろ!デッカい矢印向けられてるだろ!!!

「ヤギのミルクで作ったカフェラテです!!」
「誰がこんなもの好んで飲むと…」「大好きだァッッッ!!!!!」
やっぱりこの二人デキてるんじゃあないか!?愛し合っているんじゃあないか!?

最終的にエッグマン博士も思いの外、ストーンくんを愛していることがわかったので、このバカップルは続投してほしいですね。なんだったらストーンくんが重すぎる愛によってラスボスと化してもいい。

というワケで、カルト映画っぽさはなくなったけれども、軽妙な語り口が似合う造形のソニックとジム・キャリーパワーによって普通にコミカルで楽しい映画となっていたので本当に良かったです。アメリカでも大ヒットしてるし、あからさまに続編匂わせたラストだしで、次回作も期待して良いんじゃないでしょうかね。
というかですね、本作ラストのフック、修正前だったらアレもアレしてたんでしょうか……やっぱり修正前も観たい気持ちは強まっちゃうな……

オススメ!!