平野レミゼラブル

翔んで埼玉の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

翔んで埼玉(2018年製作の映画)
3.8
「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」でお馴染みの埼玉ディス漫画の実写版である。
原作は作者が埼玉から脱出…もとい引っ越してしまったため、3話で打ち切りの未完の作品。
埼玉を馬鹿にしていいのは埼玉県民だけですからね。妥当な判断だと思います。ちなみに千葉県を馬鹿にしていいのも埼玉県民だけ。千葉県は所詮『東京』と勝手に名乗って媚びなきゃやっていけん"敗北者"じゃけェ…

埼玉県人特有の私怨はまあ置いておいて、内容はよくぞこのたった3話から内容を膨らませて綺麗に話を作ったものだと思わず感心してしまう出来。
描写は全力でふざけてるし、キャッチコピーにもある通り茶番劇でしかないわけなんだけれども話の筋自体は丁寧なんですよね。
トンチキ要素をトンチキと見做しているのは観客と現代パートの娘だけ。本筋の登場人物は全員大真面目にトンチキを実行していくからこその面白さ。
そして、物語は最終的に劇中テーマ曲の「なぜか埼玉」やEDテーマのはなわの「埼玉県」に収束していく。
それまで「これいる?」要素でしかなかった現代パートがあそこで意味を持ち出したからね。多分この歌から逆算して映画作ってるよ。

まあ本作のトンチキ要素…というよりディスり要素は本当に物凄く、埼玉はもちろん埼玉のライバルとして今回クローズアップされた千葉はピーナッツ農家と地引網漁師からクレーム殺到しそうな設定を持ち出し、原作の時点で大概酷かった茨城はより酷い描写が追加され、勝ち組であるはずの神奈川も赤レンガ倉庫の下に死体が埋まってることにされたりと関東近辺を巻き込んでいくスタイル。
あとついでに小倉優子と小島よしおもディスっていくスタイル。全方位に喧嘩売ってるんじゃないよ!
あまりに突き抜けてディスっていくので、出稼ぎ民がいる以外に話題に挙がらなかった栃木は良かったんだか悪かったんだかである。

中でも一番好きなのは群馬県の描写で、物語冒頭から未知の巨大UMAが蔓延る超危険地帯として紹介される。
ただ物語後半でUMAは実はいなかったという一応のフォローが入るのだが、プテラノドンは普通に生息していることが確認できるので人外魔境なことに変わりはない。

あと東京の似非ブレードランナー的なディストピア描写も良かったです。
暗黒メガコーポめいた東武、パルコ、ルミネから成る暗黒駅前ロータリーほんますき。

キャスト陣としては世間知らずの坊ちゃんを好演した二階堂ふみや、岸部一徳と濡れ場を演じた実績を活かしてGACKTと割と濃厚なディープキスを交わした伊勢谷友介、名誉埼玉県人の称号を与えたい加藤諒の怪演が光る。
GACKTは格付けをやらされたり、後半完全に毘沙門天の化身だったりで本人に寄っていた。いやだってアレ長尾景虎だったでしょ。謙信公祭出てた時のGACKTだって。

盛大な茶番とディスりで彩った意外に丁寧な作劇。これを見て埼玉に行きたいって思うかどうかは怪しいけれど、まあ馬鹿馬鹿しく笑う分には良いんじゃないでしょうか?オススメ!