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誰もがそれを知っているのRのレビュー・感想・評価

誰もがそれを知っている(2018年製作の映画)
4.4
あまり評判がよくなかったので大した期待をせずに見ましたが、個人的にはかなり好きだった! ただ、ミステリー要素自体を期待して見ると、んー。まぁその点に関しては普通かなぁ。ヒューマンドラマとして見るとかなり見応えあり。まず、ペネロペクルス演じる主人公のラウラは、妹の結婚式のため、娘のイレーネと幼い息子を連れて、アルゼンチンからスペインの実家へ帰郷する。夫は、今回は仕事の都合で一緒に来られなかった。久しぶりの彼女らは、家族や友人たちにあたたかく歓迎されるが、家族以外の村の人たちはやや冷ややかな視線を送っている。この不穏さはなんなんだ。しかし、結婚式が終わってパーティーが始まると、みんなめちゃくちゃ仲良しで、わいのわいの大盛り上げ。ミュージシャンたちはソウルフルに演奏し、シンガーの声に合わせてみんな大合唱。スペイン人、テンション高いし、仲良いし、最高やなぁぁぁぁ!!! と盛り上がってるところで、事件は起こります。疲労でグッタリの娘イレーネはベッドに寝かされてたんやけど、とつぜん停電が起こってドタバタしてる間に忽然と姿を消す。そして翌日、それが誘拐だと判明。まさかのことに打ちのめされ、パニックを起こし、泣き崩れるイレーネ。翌日届いた脅迫メールには、莫大な金額の身代金の要求が……警察に知らせたら殺されてしまう。何とか自分たちだけで事件の解決を試みるのだが……その過程で彼らの過去の秘密が明らかになり、ただただ仲睦まじく見えた彼らの関係が、遅かれ早かれいつ崩壊してもおかしくない危機にあったことか露呈されていく……というお話。まず何よりも僕が本作で魅了されたのは、スペインの田舎のまばゆいほどの陽光と、だからこそ生まれる黒い闇の深さ。まことに美しい、濃厚な色彩の映像がすばらしく、まさしく本作の陰陽を刻んでいるように感じられる。そして、そんななか展開する目が離せないミステリーのスリリングさ! 一体、だれがなんのためにイレーネを誘拐したのか……その理由が明らかになるにしたがって、彼らの人間関係の在り方、見え方が変化していく。人間の醜い妬み、嫉みが抉り出されていく。この絶妙にいやーな感じを、スッピンで悲嘆に暮れるペネロペクルスが、それと感じさせずに演じてるのがうまいし、あとで駆けつけてくる旦那の役立たずっぷりがえぐい。彼自身にも秘密があり、それのせいで実はコイツが犯人ちゃうんかいという疑惑まで生まれてしまう。いざというとき何もできず、神様によって必ず助けられる、と根拠なき気休めしか言えない旦那。ルックスの胡散臭さも加わってなんかもう何とも言い難い。なぜコイツと結婚したペネロペ。そして、本作の目玉になるのが、ペネロペ演じるラウラの元恋人、実生活でペネロペの夫であるハビエルバルデム演じるパコ。さすが夫婦ふたりのケミストリーは目を見張るものがあり、ラウラの旦那との間には決して生み出せないオーセンティックな信頼関係があるように見えるのだが……こんなとこにまで疑惑の影を挟んでくる意地悪さ……さすがですわ、アスガー ファルハディ監督。この監督の作品はどれもうわーーー😩となる毒気のきいたいやーな瞬間が必ず設けられている。それが面白さでありますね。そして、なんとも言えない後味の残る苦い決断。人間と人間の関係ってお金が関わってくるとこんなに脆弱。彼らももはやキリスト教ではなくて、拝金教を信仰してしまってるということですわ。人間よりお金を大事にし始めたら、その人間関係は単なる気休めでしかなくなってるということだよ。人間の不信というのは本当に見てて気の毒だ。だれよりも不信感を抱いてる本人がいちばん損してる。そんなこんながよくよく分かる映画となっております。ちなみにミステリーの謎解きとしては、確かにえ?たったそれだけ⁈ てか、キミだれでしたっけ⁈ってなった笑 そう言われてみれば、どっかのシーンでひとりだけ、ん?なんでこのシーンでこんな動きをしたんだ?って気になったところがあったわ。アレも伏線だったのか。僕個人としては、いつかまた見直してもぜんぜんいいな、と思うくらい好きでした。結構オススメです👍
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