小松屋たから

アメリカン・アニマルズの小松屋たからのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

あまりにずさんな計画で、その実行に至るまでの過程も、犯行現場、その後のあたふたも目も当てられない。彼らが参考にしている「オーシャンズ」のような鮮やかな完全犯罪など現実には存在せず、リアルではこんなもの、ということが本当に良くわかる。自分も何か悪いことをしようとするときっとこうなるんだろうな、と思う。

ただ、「若気の至り」というには、ちょっと浅はか過ぎるし、キャラクター的に「憎めない奴ら」でなく十分「憎める」(笑)。「バッド・ジーニアス」のように、悪いことをしているのになぜか応援してしまう、というような感情は、まったく持てなかった。

しかし、これで禁錮7年は長いですねー。でも一方で、アメリカはさすが、チャンスの国なので、今やこうやって顔出しで映画に出たりもできるわけだ。その懐の深さには唸らされる。一番の主犯格が映画の勉強をしている、というのが暗喩的で可笑しかったし、ライターを目指している若者があの想い出を文章にしようとしているという肝の座り方にも苦笑させられる。

映画観賞としては、新たな挑戦を体験させてもらえた。冒頭から現在の本人たちが出てきて、計画は無残な失敗に終わったということが完全に明らかにされてから観る、という構成は斬新。ドキュメンタリーのようでもあり、劇中劇の繰り返しを観ているようでもあり。

本人たちもインタビューに答える体でありながら、完全に「演技」を意識している。自分自身に「酔っている」ことは昔とまったく変わらないのだ。役者と本人、過去と現在がモザイク状に組み合わされ、みっともなさの温度をどんどん上げてくれる。

「自分は特別な人間ではない」ということには誰もがいつかは気づく。時間は容赦なく過ぎ、死はすぐに近寄ってくる。だからこそ何かを成し遂げたくなる。その「もがき」には共感できた。