るるびっち

小さな恋のうたのるるびっちのレビュー・感想・評価

小さな恋のうた(2019年製作の映画)
3.6
なるほど、予測通りの展開だと泣けないから工夫したかな。
驚きが悲しみに繋がるから、前半の仕掛けは悪くない。

あとは定石通りの展開だが、沖縄の基地を絡めているのが新鮮。
米軍による事故の問題に踏み込んでいるのは勇敢。
『空母いぶき』が中国と名指しするのを避けて、架空の敵国を作った弱腰に比べれば、米軍と示唆しているのは気骨がある。
犯人不明で米兵の責任は問えないのだが、青春物として違う感動で処理している。事故を含む基地の国際問題を硬直した大人たちは超えられないが、高校生たちは友情と歌声で軽々と超える。社会派ではなく青春物としての見事な回答。沖縄を舞台にした意味がそこにある。

前半は男子が主人公なのだが、後半は完全に女子が主役になる。
その山田杏奈ちゃんが良いというレビューが多い。
彼女を後半の主役にしたのは正解だった。
彼女で救われた。映画だけは生き返った。
主人公が途中で変わるのも、バンド自体が主役と考えれば問題ない。名作と謳われる物でも、主役が最後に薄くなる映画は多々あるから、いいか。

ただ後半が長い。緩急のテンポが一定でノリが悪い。
バンドの歌は下手ではないが、演出がリズム音痴なのでは?

高校生の女子が「ひさびさ泣いた~」って、キャキャ言いながら帰って行った。彼女たちが感動したのなら正解なんだろう。彼や彼女たちの映画なんだから。
るるびっち

るるびっち