Shingo

孤狼の血 LEVEL2のShingoのレビュー・感想・評価

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
3.0
7/20の孤狼祭(コロフェス)にて鑑賞。
オープニングのs**t kingz(シットキングス)のダンスは圧巻。
映画公開前なので、ネタバレしない範囲でレビューする。

前作「孤狼の血」は、大上(役所広司)が牙を隠した狼として羊(ヤクザ)を飼いならそうとするも、非業の死を遂げるという結末だった。その後を継いだ日岡は、もはや狼の牙を隠そうとはしない。
そもそも、日岡と手を組む尾谷組も、表向きは協力的だが、内心では3年前の出来事を許してはいない。昔気質の親分連中と懇意になり、持ちつ持たれつの関係を築いていた大上とは状況が違う。
面従腹背の視線の中、日岡は常に張りつめてギリギリの精神状態だ。

そんな日岡を精神的に支えるのが、スタンド華のママ・真緒(西野七瀬)だ。正直、芸達者な役者がそろった本作に、西野七瀬が混じって大丈夫か?と不安があったのだが、その心配は杞憂だった。
広島弁の歯に衣着せぬ物言いが、意外にも彼女にぴったりで、重要な場面でもしっかりと場の空気に馴染んでいた。前作以上に重たいシチュエーションが多く、現場の空気に感化されたのかも知れない。

本作は原作にないオリジナルストーリーということもあってか、前作とはやや趣の異なる展開になっている。特に、極道というより外道の上林(鈴木亮平)の異物感がすごい。ヤクザと言えども生きるためにシノギをやっているわけで、無駄に暴力を振るうばかりではない。しかし上林の暴力は無軌道で歯止めがきかない。(しかも、意外と頭が切れる)
こんな手の付けられない悪童に対し、大上ならどう対処しただろうか。

前作ではそれなりに人情味もあったが、上林という爆弾が放り込まれたことで、そんな余裕は失われた。日岡を含め、信用できる人間が誰もいない。「全裸監督」のシーズン1には夢があったのに対し、シーズン2では夢がなくなり、村西がパンツ一丁にまで転落していくのとどこか似ている。日岡が大上の跡を継いで成長する物語を期待すると、裏切られることになる。
だが、本当に怖いのはヤクザより警察だという根底の部分は変わっていない。大上も日岡も狼になろうとしたが、やはり狼は絶滅する運命だったのだろうか。

全般に血なまぐさい場面が多く、血を見るのが苦手な人は要注意。殴る蹴るだけではない、人体破壊描写がエグいので、覚悟して見るべし。在日朝鮮人の問題も扱うので、そういうのにセンシティブに反応する人にはお勧めしない。あと、犬が死んだり死ななかったり。
経済ヤクザや半グレが幅をきかせる以前の、極道の断末魔を描く怪作。
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