平野レミゼラブル

孤狼の血 LEVEL2の平野レミゼラブルのネタバレレビュー・内容・結末

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

【不良性感度LEVEL UP!!!!!暴の嵐が吹き荒れ、はぐれ狼どもが共鳴する!!】
今年最凶の大本命にして、最高密度のヤクザ映画!!
『仁義なき戦い』にドハマりした柚月裕子女史が、その溢れんばかりの仁義なき&東映実録ヤクザ映画愛を血生臭く書き綴った原作を、当の東映が当代きっての暴力映画監督白石和彌とタッグを組んで実写化した大傑作『孤狼の血』待望の続編です。
もうね、あまりに待ちきれなかったから先行上映会である「孤狼祭(コロフェス)」に参加しちゃってね……さらになんかそれだけじゃ整理がつかなかったから、試写会まで申し込んで早々に2回分濃厚な孤狼の血を接種しちゃいましたよ!!!

前作は仁義なき当時の東映社長、岡田茂が命名するところの「不良性感度」が異常に高い映画でして、懐かしき波ザパーン東映ロゴの次にお出しされるのが豚の糞って辺りでいかに不良性感度が高い映画かってのがわかります。その後もちっとも不良性感度が弱まる気配は感じられず、暴力、恫喝、おっぱい、セックス、腐乱死体、真珠入りのちんぽ、生首…とむしろ不良性感度を極限まで高める方向に舵を切ったような節がある始末。
物語としても昭和の不良性感度MAXの役所広司演じる大上章吾から、平成イケメンの松坂桃李演じる日岡秀一に見事に『孤狼の血』が受け継がれる展開をやり切り、昭和から現代へ見事不良性感度の継承に成功したと言えます。
原作ではガミさんの意志を継いだ日岡が飛ばされた片田舎で起こる事件を描く『凶犬の眼』が続編となりますが、映画での日岡はガミさんから精神は受け継いだものの、やり口は「ヤクザ完全撲滅」という日岡独自の道を選択したため、映画版は映画オリジナルストーリーへと分岐しました。

2作目ということで思い起こすのは『孤狼の血』の影響元である『仁義なき戦い』の2作目『広島死闘篇』……この『広島死闘篇』は仁義なきの中でも屈指の異色作でして、全体の主人公である広能昌三が脇へと回り、北大路欣也演じる山中正治を主人公に据えたスピンオフの趣が強いんですね。
そしてもう一つ、『広島死闘篇』を異色作足らしめているのが千葉真一演じる大友勝利の存在感。この大友というのが劇中で縦横無尽に暴れ狂っておりまして、彼が映っている画面には絶えず暴の嵐が吹き荒れているという有り様。千葉がもう怪演中の怪演としか言えず、彼たった一人で『広島死闘篇』全体の不良性感度を担っていました。

となると、『孤狼の血』の2作目である本作でも千葉真一と同等の暴れっぷりを魅せてくれる「暴の嵐」の存在を期待しちゃうワケですよ……
そして、私が前々から目を付けていたのが鈴木亮平演じる上林成浩。メインビジュアルでも松坂桃李に次ぐデカさであり、そして何より演者があの鈴木亮平ですよ?常に演じる役に命を燃やし尽くすのではないかという勢いで入り込んでいき、そして必要とあらば体型も自由自在に増減させる役者の鑑通り越した役者馬鹿一代の鈴木亮平。
そんな彼が演じるのであれば、時代や作品の垣根を越えて大友勝利から上林成浩へと、見事「不良性感度」と「暴の嵐」を継承できるのではないかと睨んだのですよ。ちょうど、ガミさんから日岡へ、役所広司から松坂桃李へ「不良性感度」と「狼の意志」が受け継がれたように……
なお、鈴木亮平は白石監督作品では『ひとよ』で吃音気味で気弱な一家の長男を演じていましたが、まあ彼のその演技力を以てすればそれと正反対のヤクザだってなんのそのですよ!!というか、そもそも『ひとよ』でも感情が爆発した時に滅茶苦茶怖い姿見せていたしな……

そして、本編が始まって早々にその期待を早速上回る暴の嵐が吹き荒れることになる。
刑務所から出所する上林のそのデカい背中一面に彫られた紋々からして威風堂々。敵対する尾谷組の若頭・橘(斎藤工)からヤバいヤツが出獄するとの前振りもありましたが、もう後ろ姿だけでヤバさが伝わってきます。看守に対しては平身低頭の態度を見せますが、微塵もその態度が信じられないんだから相当なもんです。
案の定、出所早々に上林が出向くのは、その挨拶していた看守の妹が自宅で営むピアノ教室。徒党を組んで大勢で家に上がり込むと、兄から暴行を受けた恨み節を吐き、その報復として妹を殴り衣服を剥ぎの無法の大盤振る舞い。終いにゃ、「ワシをこがな目で見るなァ~!!」と両目に指を突っ込んで毟り取るという暴の嵐の瞬間最大風速に。
そんなバイオレンスの最高潮で、テレレレッ♪の例のテーマと共に『仁義なき戦い』リスペクトのOPに入るのですから、もう脳の血管が根こそぎブチ切れるってもんです。

いや、今回「流石に豚の糞から始まった前作と比べたら大分大人しいな!ダハハ!」と割とノンキしながら観始めたんですが、鈴木亮平が登場してからあっさり前作で上がったハードルを根こそぎブチ壊してきましたね……
以降も鈴木亮平が出ているシーンは軒並み倫理観がブチ犯されており、大体において暴力を振るっているため、見事に大友勝利から「不良性感度」と「暴の嵐」を受け継いでいると断言して良いでしょう。前作で「豚の糞」、「真珠入りのちんぽ」、「腐乱死体」といった小道具を用いて上げていた不良性感度の全てを、本作においてはこの鈴木亮平演じる上林成浩一人が担っています。

そのため、上林の言動全てが汚らしく、低俗で、暴力性に満ち満ちている。
「猿のセンズリみたいにビジネスビジネス五月蠅いのォ!!」といった下品な台詞回しは大友勝利そのものですし、(沸点超えたな……)って場面でもニコニコ笑っているサマは「笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙をむく行為が原点である」の体現で恐ろしく、案の定上林をニコニコにさせた奴の指が次の場面では減っており、挙句の果てには極道からビジネスに鞍替えしようとする上層部に真っ向から噛み付き、あろうことか親である筈の広島仁正会理事長の溝口(宇梶剛士)のドタマにアイスピックをブッ刺して殺害する暴挙に出るという……
よりにもよってブラックエンペラー元総長を一撃でブッ殺した辺りで上林のヤバさは天井知らずとなり、暴の嵐の行く末もいよいよわからなくなっていくという。

何より恐ろしいのはこの上林、常軌を逸したモンスターではあるんですが、それでも同時にちゃんと血の通った人間であるということも描写されていることなんですよね……
彼の出生は極貧の在日韓国人で、酒浸りで1日中暴力を振るう父親とそれを成す術なく見ているだけの母親の元で生まれ育つという悲惨な幼少期を送っています。学校はおろか、毎日ロクに飯も食えずに底辺で這いずり回る日々。そして中学生に成長して遂に父親と母親を殺害。その時「見ているだけ」で何もしなかった母親の両目を抉っており、彼の猟奇殺人の手法はそこに起因しています。
そのような環境で育った彼がまともな道を進めるワケがなく、ヤクザの五十子会に入門したというわけです。特に語られることはなかったですが、仇討ちを頑なに訴え続け、少しでも五十子の遺志から外れた者を害する行動からして、五十子正平直々に拾われたんでしょうね。そのため、彼が巻き起こす暴の嵐の根源は「忠義」というこの上なく人間臭いものになります。

上林には血も涙もないワケじゃない。むしろ彼から言わせれば「忠義」も「仁義」も忘れた他のヤクザこそ、血も涙もない畜生という扱いなのでしょう。だからこそ簡単に殺せるし、簡単に犯せる。
二代目五十子会会長の角谷(寺島進)とその妻のフィリピン嬢の獰猛な愛犬を撃ち殺し、その檻の中に全裸にして一晩中嬲った夫妻を首輪で繋ぐシーンなんかは、誰が畜生かということを「これでもか!」と示しています
首輪の鎖を引っ張り上げて諸共殺害し、両目を刳り貫き穴に放り込んで火をつける一連のシークエンスが一番強烈で、凄まじい絵面と化していました。

「コイツまだ生きてますよ!ほら!ピクッて動いちょります」
「おぉ、人間の生命力たぁ大したもんじゃのォ…!」
「燃えても動いちょる!」
「ビクンビクン動いちょりましたのォ!!」

……一番頭がおかしいの、この極悪組長に平然とついていって一緒に非道を働いている上林組員じゃないかって思う時があるんですが、なんなんですかねコイツら。上林の暴走を前に脱落したの一人くらいで、あとは皆同じように暴れ狂ってるから練度の高い狂人集団すぎる……
コイツらはコイツらで、元の飼い主から離れて懐いてきたカワイイ駄犬は真っ当に最後まで可愛がる妙な人間味持ち合わせてるしよォ……

勿論、上林も五十子正平関係以外でも情を持ち合わせていまして、腹を空かせていた幼少期に世話になった焼き肉屋の婆さん相手には今も穏やかに接したりしている。婆さんも上林の境遇を理解した上で少年期の頃からの愛称で呼ぶし、叱ったりもする。こういう対等な人間関係も築けているので、決して理解不能な怪物ってワケではない。
斎藤工がMCUのサノスに例えていたのが正にそれで、最初から最後までブチギレている腐れ外道で絶対悪だけれども、しっかりその根本には芯のある情と憤りがあって、どれだけ嫌でもコイツは人間だって思わされてしまう。でも、一度暴れ出したら止めることは不可能な災害でしかないため、普通であれば相互理解はほぼ不可能。じゃあ、どうすればいいのかって言うとキャッチコピー「闘うヤツしか生きられない」通りに真っ向から闘っていくしかない。そして、闘って理解するどころか、あろうことか共鳴までしてしまったのが我らが日岡なのです。

ガミさんの跡を継ぎ、狼のジッポ片手に3年間ヤクザと闘い続けていた日岡ですが、彼が選んだ道は「ヤクザの飼い殺し」を図ったガミさんよりも険しい「ヤクザの撲滅」です。
3年の空白期間中に前作のツルッとした姿が精悍な髭ヅラになったばかりか(桃李くん、ワイルドな髭ヅラの方が似合っている気がする)、日岡自身がハメて弱体化させた尾谷組やその上の仁正会の面々とも良好な関係を築き上げ、裏で干渉することで抗争を抑え徐々にその力を殺いでいくことに成功している。ヤクザ内にチンタ(村上虹郎)というエスを作ったりの違法捜査も辞さず、見事に大上章吾を超えようとたった独りで闘っている。

無論、大上章吾よりも困難な道を歩んだが故の苦悩も持ち合わせる。
作中で何度もヤクザ撲滅の為にヤクザともつるむダーティーな姿は咎められ、「己が本当に正義を成す孤狼か、ただ正義に酔うだけのタチの悪い狗か」ということは何度も自問自答します。
前作で真っ向から一之瀬をハメて逮捕までさせたのに、尾谷組との関係が良好なのは「おや?」とは思うのですが、案の定尾谷組の皆が組の存続のために、内心忌々しく思いながら付き合っていたことも露呈していく。
上林という暴の嵐の到来で、日岡が保った秩序は徐々に崩壊に向かい、そして同時にその秩序をもたらした己の正義をも揺らがしていくのです。
大上章吾不在の世界で『孤狼の血』を継いだ者の姿は、時に消えかかりそうな程に危うく揺らめきます。

当然上層部にとっても、前作で醜聞を握られたことで自由意志での行動を許すことになってしまった日岡は腫れ物扱い。
その為、今回の上林出所に端を発する一連の事件は、3年前の五十子会と尾谷組の抗争が日岡によるものだと吐かせる為に日岡の元上司である監察官の嵯峨(滝藤賢一)が描いた絵図だったのです。
今回、日岡とバディを組んでいた瀬島(中村梅雀)も嵯峨の息がかかった公安刑事であり、瀬島を信頼した日岡が彼に全てを打ち明けることまでを計算に入れて仕組まれていた。
瀬島とのコンビは、滅茶苦茶な老刑事とそれに振り回される若手という一作目の反転であったため、見事に騙された!むしろ上林が日岡の家族を人質にしようと調べさせる描写の後に、瀬島一家での団欒が入るため、彼らが上林の毒牙にかかるのではないかとヒヤヒヤしたくらいだったので、心配して損した感が半端ないです。

正直、いくら上層部の醜聞を抱えているとはいえ、一介の巡査相手にここまでやるか!?って気はしなくもないですが、逆に言うと日岡がこの3年の間にそこまでの怪物に成長していたって証左でもあります。
鈴木亮平が暴れすぎて全体的に印象塗り潰していたため日岡の怪物性はわかりづらいのですが、そもそも手錠で両手が不自由な状態であの怪物と互角以上に渡り合っている時点で十二分に怪物なワケです。

戦闘シーンのやりたい放題感は極まっており、手錠をかけられ警察で軟禁されていた日岡が上林が動いたと知るや否や窓からダイブして逃走するところからしてスピーディー!
尾谷組にトラックで突っ込む上林で完全にブチアガるし、その後の派手なドンパチ抗争も自然と高揚させられる。

何より日岡到着から始まる上林との決闘ですよ!!
お互いに警察として、ヤクザとして必要である正義と仁義を見失った上層部に憤りを感じ、そして大切な親である大上章吾と五十子正平の遺志を継がんとがんじ絡めの状況で必死になって足掻いた一匹狼同士。
この一点のみでこの二匹の孤狼は共鳴し合い、二匹だけの殺し合いに応じるのです。

派手なカーチェイスからの銃撃戦に始まり、車がクラッシュしたかと思えばポン刀引っ提げ襲い掛かる上林。
上林の暴の嵐は凄まじく、横転した車からいち早く抜け出して不意打ちを食らわせ、激闘の末にポン刀が折れ、親指が千切れとんでも腕に刀を巻き付け刺殺せんとするブチギレっぷりを見せ付けます。
鈴木亮平が全盛期の千葉真一レベルの暴力性を身に纏っており、満身創痍なのに「こんなの勝てるワケないだろ……」って気迫を漂わせていたのが恐ろしい……

しかし、上林の「俺には死神が憑りついとるんじゃ」の一言で、日岡は上林に付け入る隙を見出します。上林は自らを「死神」に見出される力を持つからこそ今日まで無茶苦茶をやっても生き延び、そして今この瞬間も暴の嵐を吹き荒らしていると過信している。だからこそ、派手に横転した車から抜け出せたし、自分に向かって引き金が引かれた銃の弾は尽きていた。
しかし、実際は警察上層部のどうしようもないメンツと、醜聞隠しの為の絵図の駒として良いように泳がされていたに過ぎないのです。だからこそ日岡は「死神なんかおるかい」と吐き捨てます。お前はたまたま使える駒だから生かされているに過ぎん。そこに気付かぬまま、言うに事欠いて死神とはお笑いじゃ…と。
この瞬間、日岡は本作の圧倒的暴である上林に対して精神的優位に立つのです。皮肉にも自らが「孤狼」ではなく「首輪が付いたただの狗」であると自覚した為に。
そして、例え首輪を付けられた狗であろうとも、立派に牙を生やしている。
だからこそ、日岡は上林という「孤狼」を最終的に嚙み殺すのです。それも、己の飼い主である嵯峨の拳銃を奪って撃つという手段を用いて……

これは同じく「孤狼」として共鳴した仇への手向けであり――
あるいは「狗」に成り下がりながらも生かしておけぬと感じた責務であり――
そして自らを愚直なまでに信じた「日岡」自身の純粋な正義であったのでしょう。

一連の銃撃を行う松坂桃李の動作の格好良さ、因果応報的に撃ち抜かれる上林の目玉、これまで散々煮え湯を飲まされ続けた嵯峨への「これでおあいこですけぇのぉ…」の一言、全てがキマりまくっており、何回観てもこの場面は痺れます。

何より、やっと上林が死んだことへの安心感が強すぎるんですよね……
上林はこの1作のみで縦横無尽に暴れ狂わせた上でバリバリにキャラを立たせる凄まじいインパクトを誇ってはいましたが、同時に絶対に生かしておいてはならない「怪獣」でしかなかったので……『広島死闘篇』で大友勝利が逮捕された時も「えッ!?コイツ生かしておくの正気か!?」って思ったクチでしたが、上林が日岡と決着つかないまま逮捕されそうになった時はその比じゃないくらいに動揺しましたからね。ちゃんと始末をつけてくれたので、本当の本当に安堵したというか……
やっぱりね、最初から最後まで上林の暴の嵐に振り回されっぱなしだったので物凄く疲れたというか、死んだことでザマミロ&スカッとサワヤカな気分になるカタルシス以上に、「死んでよかったー!」という安心感でいっぱいだったのは本当に異常なことだと思うよ……

結論としては、良いところは「鈴木亮平が最初から最後まで暴れ狂っている」ことで、悪いところは「鈴木亮平が最初から最後まで暴れ狂っている」ことですね……
いやね、確かに俺は「鈴木亮平が全盛期の千葉真一並に暴れ狂ってるところが観たい!!」とは言ったよ?言ったけどね、やりすぎ……
確かに鈴木亮平は千葉真一と同等かそれ以上に暴れ狂っており、マッケンユーやゴウドンといった実子には受け継がれなかった「千葉因子」を隔世遺伝によって受け継いでいる程の「暴の嵐」を体現しており、その点では滅茶苦茶にアガったし感動しました。鈴木亮平、お前が千葉真一を継げ……!って感じに。
ですが、何事にも限度はあるだろ……ッ!!千葉真一を超えて大暴れしろとは誰も言ってない……ッ!!

同時に『広島死闘篇』や『沖縄やくざ戦争』で感じた「作品の面白さを担っているのは千葉真一なのにどうして途中退場させちゃうんだろう?」という疑問にもようやく解答が出ました。
「最後まで暴れさせると物語の収拾がつかなくなる」からです……
本作、別に物語的には破綻はしていないのですが、割と破綻寸前にまで突き進んではおり、それでなくてもジャンル自体は前作と全く異なる方向に鈴木亮平一人で持って行っちゃいましたからね……
前作が『マッドマックス』ならば、本作は『マッドマックス2』くらいには世界観が違います。なんで核戦争と同等の変質を鈴木亮平がたった一人でもたらしているんです???

他のキャラの話もしたかったんだけどね……全て鈴木亮平の前じゃ影が薄くなっちゃったからね~。前作からのジャーナリスト高坂(中村獅童)の蝙蝠野郎っぷり故のトリックスター感とか、ガミさんにちんぽから真珠摘出されたにも関わらず社名に「パール」付ける吉田(音尾琢真)の意味不明なしぶとさとか秘書のケツむんずと掴んでの「会社にいる時はパンツ脱げ言うたじゃろうが!」の下劣っぷりとか面白かったけどね。
チンタに関しては何ならキャスト発表の時から死臭漂ってて案の定でしたが、まあヤクザ映画におけるああいう役の致死率は、古今東西問わず100%なんで仕方ない。それでも、村上虹郎の好演もあってその壮絶な最期は哀しかったですね。

完全に実録ヤクザ映画にオマージュを捧げた前作及び原作の『孤狼の血』から逸脱しているため、そちらのファンの感情としては割と困惑の気持ちも強いんですが、でも「こういうの好きじゃろ?」って聞かれたら「大好きですぅ……」って答えるしかないです……
まあ東映映画としては73年頃の実録ヤクザ映画の代表格『仁義なき戦い』シリーズから、70年代後半の『沖縄やくざ戦争』とか『やくざの墓場 くちなしの花』のような「実録謳ってるけど微塵も実録じゃねェ」やり過ぎヤクザ映画に発展したってことでむしろ自然にも感じましたが……
少なくとも、今挙げたシリーズに負けないレベルの熱量と狂気を、令和の時代の大作邦画で負けじと再現した心意気とスゴ味は最高評価に値するでしょう。


最終的に日岡は度重なる不祥事と嵯峨が描いた絵図を力技でねじ伏せ、ド田舎の駐在として飛ばされたため、やろうと思えば原作の『凶犬の眼』へ移行することも可能ですが、まあ流石にそっちには転ばなそうですかね……
なんせ幕間の出来事として処理するには、本作はあまりに暴れすぎてしまいましたから……『マッドマックス』から『マッドマックス2』まで世界観を激変させちゃった以上、原作の実録ヤクザ路線に戻すことはまず不可能なんですよ。
ただ、孤狼を継承した1作目ラストと違って、共鳴すらした最悪の狂狼を殺すことで道標を再び喪い、孤狼どころかただの狗にまで成り下がってしまった日岡をそのままに完結してしまうのはあまりに酷です。そんな想いに応えてくれたのか、本作ラストで現れる日本最後の狼の影が次なるLEVELの引き上げを否応にも期待させてくれます。

ただ、まあ「もうお前これレベルカンストしてるだろ!!」って最凶のヤクザ出しちゃったんで、ハードル滅茶苦茶高いですけどね!!『LEVEL2』にしてこれなら『LEVEL3』はミュータントヤクザとか出さないと割に合わないぜ……『LEVEL4』で下っ端構成員の武器ですらビームサーベルになり、『LEVEL5』で主食がゲッターエンペラーなヤクザが君臨する。もう『HELLSING』の後書き人物紹介を地で行く世界観だ……

『孤狼の血LEVEL2』登場人物紹介
・日岡秀一(演:松坂桃李)
呉原東署・刑事二課・暴力班捜査係巡査。故・大上章吾よりジッポと遺志を受け継ぎ暴力団壊滅を目指す一匹狼。

・上林成浩(演:鈴木亮平)
五十子会上林組組長。故・五十子正平の腹心。全てを影であやつる至高の存在であり、その強さは「小学生が考えた絶対無敵ロボ」を小指でなぎたおし、食うという悪逆非道の極地の存在。ちなみに上林組のヤクザはチンピラレベルですら使う日本刀はストームブリンガー。銃はエンジェルアーム。口から吐くエネルギー弾でグレンラガンが超ひも状態にまで分解する恐怖のやくざ。全長50m以上、体重2兆トン。パンチ一発でゼオライマーが死ぬ。ゲッターエンペラーが主食。イデオンで星滅ぼしてる流星は実はコイツが口から吐いている。キラを逮捕したのもコイツ。撃ち殺したのは松田さん。スティールボールラン優勝