「虎狼の血」の原作となる三部作は読了済で、勝手に2作目の「狂犬の眼」の映画化と思いきや、完全なるオリジナル映画だった。なので、鈴木亮平の役どころも「狂犬の眼」に出てくるあの人か？などと予想していたので、全くもって違うキャラクターでの登場に最初は戸惑ったが、途中でこれは「虎狼の血」の続編を白石監督が作ったオリジナル映画なのかと気づき、原作のことは一切忘れて鑑賞することにした。
大上が亡くなったあとの日岡。前作とは異なり頬もこけ、大上からもらったZIPPOを手に煙草を吸う日岡。燻りと飢えという一見相反するものを自分のなかに同居させているような日岡の様子に3年という時の経過と、語られない日岡の戦いの日々が感じられる。今作の松岡桃季演じる日岡は、明らかに前作の日岡とは違う雰囲気をまとっている。
そして、今作のプロモーションでも松岡桃季と鈴木亮平が言っていたけれど、今作は、松岡桃季演じる日岡、鈴木亮平演じる上林、そして、村上虹郎演じるチンタの3人の関係が見所になっていると思う。上林は本当に見ていて怖かったし、チンタは見ていて心が揺さぶられた。（時折、見ていられないシーンもあり目を閉じてしまったけれど…）
完全オリジナルストーリーの今作は、前半これでもかというくらい復讐に燃える上林の姿が描かれる。時折挟まれる上林の幼少期の頃の描写が唯一上林の人間らしさを垣間見せるけれど、それ以外は本当にただただ復讐の鬼と化す上林の所業を見せつけられる。登場から全編にわたり鈴木亮平演じる上林の存在感とつき突き付けれる恐怖に圧倒された。
一方で、知らぬ間に警察の手によってがんじがらめになる日岡と、日岡についていこうとするチンタ。血と暴力の展開が続き、見ているこちらも苦しくなってくる。
一体これはどうやってこの闘いに終止符を打つのだろうと思い、時折見ていられないシーンに目を伏せながらも、引き込まれてしまった。
今作は、「虎狼の血」をベースに日岡のその後を白石監督が作ったもので、それは、私は予想していたよりもいささかハードで辛いものだった。広島という街を舞台に、警察と裏社会の人間を通してみる世界はとてもハードだ。そんな世界で、自分の信念と矜持を持ち、それを研ぎ澄まし、例え折られても闘う男の姿を見せたかったのかもしれない。
そんな男たちの姿を見たい方にはおススメの一作だと思う。
追記 ラストを見ると原作の2作目にもつなげられそうな気もするけれど、ここまで描いてしまうと、この世界観を突き抜けて欲しい気持ちもあり…でも、続きも見てみたいと思うのだ。
