まっつん

戦慄の絆のまっつんのレビュー・感想・評価

戦慄の絆(1988年製作の映画)
4.0
クローネンバーグ88年の傑作。再見ですが、やはり兄弟姉妹がいる人間としては涙無くして見れないですよこれは。

まずオープニングからクローネンバーグっぽさ全開!世にも奇妙な手術器具のイラストがハワードショアの美しいメロディとともに映し出される!なんだあの道具!笑。

クローネンバーグという監督はこれまで一貫して「内面の外部化」を描いてきたと思います。「スキャナーズ」では超能力を通して人間の考え(内面)が外部化される様を描き、「ヴィデオドローム」では1人の男の内世界が外宇宙へ溢れ出し世界を変容させる様を描いていました。本作でも「兄弟の内面的なつながり」が外部化した形としてのへその緒が登場すると。そしてラストはその「内面的なつながりを断ち切る意思」を外部化させて結合体双生児分離手術が描かれるわけです。

ジェレミーアイアンズが一人二役で演じるこの双子の兄弟は「足して1になる存在」でした。社交的な兄に対し奥手な弟、性格はまるで違うのですがお互いを補い合い常に「足して1」になっていた。そこに現れた奇形の子宮をもつ女優。彼女の存在が兄弟が成り立ってきた危ういバランスを揺るがしてしまった。彼女の3つに分かれた子宮はそういう意味では非常に示唆的です。彼女によって童貞を捨て、恋愛を知ってしまった弟のアイデンティティは激しく分裂し、1に帰結することができなくなってしまったのです。

そして涙が出るのはラストですよ!冒頭にも書いたように「内面的つながりを断つための結合体双生児分離手術」を行い、完全に兄のとつながりを断つことになった弟。彼は身支度を整え家を出て、こうなる原因を作った女優(今は恋人)の元に電話を掛けようとするが....ここはねぇ、兄弟いる人ならもう泣きますわな.....てか精神的に兄弟と言っていいほどの繋がりがある人なら泣くんじゃないでしょうか?