140字プロレス鶴見辰吾ジラ

メン・イン・ブラック:インターナショナルの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

2.5
【出涸らし】

もう、あの頃のように
黒服とサングラスに
飛び出るガジェットに
ときめかなくなった。

「メン・イン・ブラック」というオタク心を擽るコンテンツはどこへ行ったのか?いや、どこへも行っていない。時が移ろっただけなのだろう。「キングスマン」というコンテンツが出来た。男臭い面はあるが上流階級の下品なストレス解消コンテンツだ。皆はもう「ロズウェル事件」よりもフリーメーソンやイルミナティや世界の裏で起こっているかもしれないクライシスに目が向くようになった。空飛ぶ円盤もビッグフットもネス湖の恐竜の生き残りもフェイク動画が溢れかえり、解明が始まったからだ。今は「9・11の捏造」やらでコンテンツはアップデートとされスパイや秘密結社のまた違うスタイルが当たり前になった。宇宙人を捕まえる黒服は時代とともに隅へ向かった。熱心なのはオタクだけだろう。

オリジナルメンバーは代替わりし、女性解放運動の目配せを自虐的に放り込み、そして結局はスパイと新兵モノの応用構図に彩られた本作は、冒頭の伏線はあるものの、二重回想でゴチャついて以降は巨大なヒーローコンテンツの汁を啜るのうなキャスティング。「裏切り者がいる」というスパイ映画の古典手法のままに世界を冒険するエンターテイメントは、新たなエイリアン造形も過去作に一泡吹かせようとする情熱も感じられない。ただ過去のコンテンツをそこに見せているだけの投影にすぎない。

予測を超えることが今のコンテンツに必要だが、それもなぞられた地下資源の採掘に過ぎず、さらにコメディ路線の世界救出モノとしても出涸らしだ。新兵が葛藤や苦難を乗りこえユーモラスに闘う姿を我々が摂取しすぎて、さらには宇宙人や空飛ぶ円盤なんてモノを根っから信じなくなった荒れ地に多少の水を注いでも緑はもうもどらないのだ。

“インターナショナル“という今風の添え物も文化的に知的でなく、ただワンアクションとどんでん返し予告に塗れた何かと何かを組み合わせた再放送のよう。

いつから僕たちは宇宙に想いを馳せなくなったのだろう?