きよぼん

スマホを落としただけなのにのきよぼんのレビュー・感想・評価

3.3
その昔、「ポケベルが鳴らなくて」というドラマがありました。今観ると、当時は最新デバイスだったポケットベルを使ったコミュニケーションを、ちょっと古いと感じてしまいます。

これは現在のスマホにもいえることです。この映画のテーマである、個人情報を閉じ込めたスマホという最新のデバイスや、SNSを使ったコミュニケーションというのは、もしかしたら近い将来では古びたものとして、こういう時代もあったなあ、と思い出すことになるのかもしれません。

しかし、デバイスは最新のものでありますが、人の本質というのは昔からそう変わりません。この映画に出てくる個人情報のばらまき、SNSでの嫌がらせ、画像や動画の悪用などは、昔で言えば怪文書、ストーカーや”なりすまし”ですし、写真を別の意図としてミスリードするというのもスマホ以前からあります。

新しい道具であるスマホを使うことによって手法やスピードや拡散力は全く違いますが、この映画で描かれることは、昔ながらの人間の社会生活における基本的な恐怖である点が、セオリーを抑えたサスペンスとなっています。

その一方で、昔とは人の心にあるものが変わっているのも事実です。

麻美(北川景子)と言い争いになったとき、富田(田中圭)が言う

「オレの話は信じないのに、自分のことは信じろっていうのかよ!」

という言葉が象徴的です。ネットというデジタルデータが行き交う世界では、昔より人間は疑心暗鬼になっているように感じます。そこがこの映画が描いている「現在」と言えるでしょう。

監督・中田秀夫の手腕は流石で、映像、展開ともに映画全体のスリルと恐怖を支えています。



美人が顔を歪ませるのは画になる。北川景子の叫び顔は素晴らしいやね。
きよぼん

きよぼん