韓国発のサイキック・アクション映画。
韓国ではほぼ同時期に『悪女/AKUJO』が公開されているのだが、それまではアクション=男性俳優の特権主義的な風潮だったところでのカウンターカルチャーのように傑出した女性主体のアクション映画が生まれている事実がなかなか興味深い。
『悪女/AKUJO』がスピーディなアクションシーンに極端な形で特化した作りだったのに対して本作はかなりドラマ要素にも力を入れているのが特徴的だ。
前半の朴訥とした陽気な青春パートにはそれなりの尺が用意されているのでその朗らかなムードにはやや面食らうけれど、その下地が敷かれているからこそ後半からの大胆なシフトチェンジに度肝を抜かされることになる。
つまり、本作は圧巻のアクションシーンが肝なのは間違いないけれど丁寧に積み上げられた脚本も素晴らしいのである。
再鑑賞することでその細かなトリックが明らかになる巧妙な脚本が非常に秀逸である。
コンゲーム的な細工の施されたストーリーの驚異的な転調に伴うジャユン(キム・ダミ)の佇まいの変容に説得力が生まれているのだ。
そのダークで周囲の理解を寄せ付けない圧倒的な存在感は映画タイトルそのものであり、韓国ノワールの持つ苛烈なバイオレンス描写と相まって凄まじいインパクトを残している。
比べるのもナンセンスなのは承知の上で、MCUのスカーレット・ウィッチなど歯牙にも掛けないカリスマ性に終始魅了されてしまう。
アクションのアイデアも豊富で視覚的な面白さが詰まっているのもポイントだ。
アクションスタイルは下手に出れば渋滞しそうなほどに様々な要素を詰め込んでいるのだけれど、精緻に組み立てられた画面構成とソリッドな演出によって驚くほどにタイトな印象になっている。
アクション映画は世界的な潮流として、ジョン・ウィック以降(というより87eleven Action Designの台頭以降)、強者も痛みを伴うリアリティ路線に舵を切っているように思えるのだけれど、本作にはそんなトレンドなどどこ吹く風といった態度でオリジナルのスタイルを貫き通している。
少しばかり不満があるとすれば、もう少しアクションシーンを堪能したかった。
前半のドラマパートが重要なセンテンスであるのは重々承知の上で、観客が最も期待している(はずである)戦闘描写にもう少し時間を割いてくれていれば、よりヒプノティックな余韻に浸れたのかなとも思う。
少し物足りなさを感じたままクリフハンガーで終わる結末にムズムズしてしまった。
とはいえようやく続編の公開がリリースされたので、その消化不良感は解消されるだろう。楽しみに待ちたい。