マツシマ

麻薬王のマツシマのレビュー・感想・評価

麻薬王(2017年製作の映画)
3.3
1970年代〜80年代の韓国の釜山を舞台に、一介の貴金属商から密輸商、そしてヒロポンを捌き巨万の富を得る麻薬王へとのし上がる男の、栄枯盛衰の物語

物語としては実に単純で
一人のオジさんの成功から失敗までの縦軸一本のストーリー

だけどその進路上に配置されたオブジェクトというかディテールの数々が、見ているだけで楽しい
例えば70年代辺りを再現したっぽい、釜山の街並みの乱雑さと妖しさ
大阪や東京の汚さと程よいデタラメ感
(神戸だけはポートタワーが映っていたせいで、あれ?現代?と違和感があったのだが、ポートタワーは60年代から建ってるらしい。マジかよ)
古い車が現役の如くバンバン走る!
韓国だけど昭和ファッションと分かる素敵衣装の数々

それらが目に楽しく
またテンポの良い編集で単調なストーリーでも全然飽きない
音楽も良いんだ……(韓国音楽だから聞いたことないハズなのに、彼の国の「懐メロ」なんだろうな!と即わかる歌謡メロディたまらない)

しかしまぁぶっちゃけそれらはオマケと言える
この映画を2時間飽きずに見せ切る最大の要素は
何よりもう
ソン・ガンホの顔
顔顔顔顔顔!!!
顔である

ソン・ガンホの顔芸を無限に楽しんでるうちに映画が終わる
そう言っても差し支えないほど
ソン・ガンホの顔は最高だ

もはやソン・ガンホのアップだけで80分くらいイケるのでは……?

途中、自らの商売道具であるヒロポンに手を出してからなんて、顔の真骨頂
これは撮影で本物のヒロポン使ってますわ
じゃないと説明出来ないくらい
顔!!!

ウルフオブウォール・ストリートのディカプリオと
麻薬王のソン・ガンホ
これらをアカデミー「撮影でホンモノ使ってるんじゃないの?」賞にノミネートしたい
映画界三大ガンギマリ顔と言いたい
(あと一人は自由枠だ。個人的には「レオン」のゲーリー=オールドマンを推したい)

てなワケでソン・ガンホの顔技に魅せられる映画で、それはそれで最高なんですが
ストーリーの省略の仕方がマズイのか、分かりにくいところもチラホラリ

主人公の成り上がり方がイマイチ分からない(賄賂渡したり、組むヤクザを変えたり、てのは分かるけど具体的なシーンが少な過ぎて、あれ?いつの間に?てなる)
ライバル的なヤバい奴がいたら変わったのかな

とにかく成り上がりの「振り」が弱いせいで、転落という「オチ」までの高度が低くて、そこの気持ち良さ(または悪さ)
が弱かったのはちょっと残念


軍事力で国のトップになった大統領が部下に射殺されちゃった事件のあった時代
お上にいくら媚びて取り入っても風向き次第で転落するということへのリアリティを感じるには韓国の歴史に多少造詣がないと難しかったり
韓国に詳しければもっと楽しめたのは間違いない
実際韓国では劇場公開されてかなりヒットしたみたいだし……


しかし羨ましいぞ韓国!!
日本、大阪にだって闇社会でかなり大物だった人は絶対いただろうし
この空気感でネトフリで映画化してよ……!!!

と思えるくらいには良い映画でした