とりん

THE GUILTY/ギルティのとりんのレビュー・感想・評価

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)
3.2
2020年18本目

公開当時も話題になっていた、全編緊急通報指令室でのヘッドフォンの会話で繰り広げられるワンシチュエーションムービー。
デンマーク映画とあまり馴染みのない国の映画で、低予算でありながらも、この斬新とした作りには驚かされた。
本当に最初から最後まで、指令室から出もせずに、電話の向こうとの相手との会話で成り立っている。
主役となるアスガーに関する情報も、彼がいろんな人と電話するやり取りの中で明かされていく。
彼が救おうとする人たちとのやり取りも鑑賞者とリアルタイムで進んでいくので、いかに緊迫感があるかというのが、電話越し、通話を介して伝わってくる。
もちろん彼の表情などもそうなのだが、正直音だけでもこの映画は楽しめると言えるほど、映像より音に重きを置いている。

展開的には少し読めてしまう展開だけれど、それ故にそこへの繋げ方というか、このワンシチュエーションだからこその展開の仕方、情報を少しずつ出すという作りはとても良かった。
観る前は単調なのが目に見えていたので退屈かなと思っていたが、そうではなく、少しずつ紐解かれていく情報を頭の中で組み立てていき、一緒に事件を解決へと導いているような気持ちにもなった。
通話を介して、電話越しの状況が頭の中で想像で組み立てていくところにもこの映画の良さがある。
本来映画は視覚と聴覚で楽しませてくれるが、この映画は視覚から与えられている情報はアスガーの焦燥感のみであり、あとは電話越しの声という聴覚情報のみ。
これが受取手一人一人がそれぞれ違う情景を浮かべていることになる。

アスガー1人しか目にしていないのに、他のシーンまで頭に焼き付いているようである。
必死に助けを求めようとするイーベン、妻子を助けたかっただけなのに自分の犯罪歴もあり周りを信頼できないミカエル、ママの帰りを待つマチルデ、そして無残な死を遂げてしまったオリバー、それぞれ映像を見ていないのにどんな感じなのかまで想像ができてしまう。
聴覚だけでもこれだけ情報を得て脳内で映像を作り上げることができるのだなと。
少々アスガーの頭の回転があまりよろしくなく、感情的であり、それ故にこの話自体が存在するのだけれど、それがイラっとするところもある。
ただそれをうまく表現できているという点では良い。
これまでもワンシチュエーションムービーはあったけれど、これはその中でもかなり斬新で、新鮮だった。
とりん

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