140字プロレス鶴見辰吾ジラ

斬、の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

斬、(2018年製作の映画)
4.0
【反異世界転生/ドライヴ】

どんなに頭で思い描いても「斬る」という行為に踏み出せない苦悩。暗い画面に描かれる惜しみない血の吹き出す暴力の瞬間最大風速。池松壮亮、塚本晋也、蒼井優、そして顔力とカリスマ性の中村達也。演技の熱量は静にして一撃がキレる。時代劇であって反時代劇。キャラ萌えというには上品で、オナニーが染み入る。どことなくレフン監督の「ドライヴ」のような手触りと暴力の解放の先に報われたのかどうかを問わせる背中、蒼井優の絞り出すような慟哭と正面切っての演技は見事。キャラが生きるも発射されぬ男根のメタファーが、彷徨って彷徨って、そして一撃の迸る感情に妙に生々しく爽快とその反対側がギトギトと胸にこびりつく。「若者の○○離れ」と揶揄される今日において、動乱の江戸末期に転生しても所詮あの程度なのだと諭されてしまうそんな映画。しかしながら上品なキャラ萌えで静かながら熱を持ったフェティシズムなり。