のん

凪待ちののんのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
3.9
とってもクズ

白石和彌監督の真骨頂は、クズ人間を主役に映画を撮れるその演出の力強さだと思う。



『彼女がその名を知らない鳥たち』の蒼井優や『孤狼の血』の役所広司など、人格者からはほど遠いキャラクターを魅力的に描ける監督の新作の主役もこれまたドがつくほど完璧なクズ役である。


香取慎吾演じる主人公は、ギャンブル依存症で定職にもつかず同棲している女性のへそくりをくすねるようなどうしようもない人間である。


有り金を全部競輪に突っ込んで溶かしてしまうなど、クズあるあるが満載。たぶんこういう人は全国に200万人くらいはいると思う。



とはいえクズなだけで悪人ではないところがまだ救いがある。予告やポスターではサスペンス的な展開が強調されているが、そうした要素は薄い。周りの人間を巻き込みながら、それでも生きていく不器用な人間の人生賛歌だと個人的には感じた。
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