シマすけ

ドクター・スリープのシマすけのネタバレレビュー・内容・結末

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

敵の敵は味方


シャイニングの続編ですがキューブリック監督のものとはかなり毛色が異なり、超能力少女とおっさんダニーのコンビvs生気を貪る化物カルト集団による壮絶なサイキックバトルが繰り広げられる映画になっています。

原作者スティーブン・キングはキューブリック監督のシャイニングをひどく嫌い、ボロクソに言っていたのは有名な話。そのため今作はキング節全開な設定や展開、演出になっています。
面白いのが相手の頭の中に侵入する戦い方で、罠を仕掛けたり記憶を盗む様がまるでインセプションのよう。前作ではよく分からなかった超能力「シャイニング」についてもしっかりと説明されているので不満を持っていた人も一安心できます。
ただその分前作の理解不能な恐怖が薄くなっているうえホテルの出番も少ないので、前作の狂気を期待していると肩すかしを食らってしまうかもしれません。

しかし前作のカメラワーク、BGM、登場人物やホテルの住人達が十分リスペクトされたうえで再登場しているので、シャイニングに少しでも魅力を感じていれば興奮すること間違いなしです。
・冒頭のワーナーロゴ
・タイトルロールのホテルとカーペット
・ハロランが守護霊として復活
・ビビ割れREDRUM
・クライマックスに前作のOP曲アレンジと共に姿を現すホテル
僕はこの5つに心掴まれました。

カルト集団のリーダーとの最終決戦ではダニーがまさかの呪いのホテルそのものを巨大な罠に作り変え、かつての強敵が(一時的に)味方になるという少年漫画ばりの熱い展開が待っています。
このシーンではシャイニングのリスペクトが特に濃密に凝縮されており、この30分間だけでも劇場で観る価値がありました。ホテルの最期も原作シャイニングを意識したものになっており、キューブリック版に色んな意味でケリをつけるという強い意志を感じました。

キューブリック監督版への強いファンサービスとリスペクトを保持しつつ、原作者キングが本当に見たかったであろうシャイニングを絶妙な匙加減で製作して生まれたのが「ドクター・スリープ」という映画です。


以下追記
・野球少年がカルト集団に嬲り殺しにされるシーンが痛々しくてかわいそうすぎて見ていられなかった。ITのジョージやルーザーズといい、スティーブン・キングは美少年に対して歪んだ愛情でも持ってるの?
・前作で強烈な印象を残した紳士の着ぐるみカップルが出て来なかったのは少し残念。まぁ出てきたら亡霊が集結した時にそいつだけ異様に目立つだろうから良かったのか…?
シマすけ

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