前半ミュージカル後半珍道中の超絶傑作
矢口史靖監督はデビュー以来一貫してコメディ映画を手がけていて、私の大好きな『スウィングガールズ』をはじめ、「そこいくか！？」という予想斜め上の題材を物語として紡ぐのが抜群に上手い。
最新作となる『ダンスウィズミー』は催眠術により音楽を聴くだけで身体がミュージカル体質になってしまうOLのストーリー。
こと日本においては最近のヒット作は多くが全てがミュージカル映画か音楽映画（『アラジン』『ボヘミアンラプソディ』や『君の名は。』等々）を考えると日本人は意外とミュージカルが好きなんじゃないかと思ってしまうが、苦手とする人も多いらしい。
主な理由は劇中でも語られるが、「いきなり音楽がかかりだすと踊りだすなんておかしくない？』というものであり、まあ気持ちはよく理解できる。
映画というフィクションのなかでもミュージカルという世界は言うなれば一種ファンタジーの領域で、あまりに現実離れした演出に興醒めしてしまう人も多いのだろうと思う。
本作は宝田明演じる怪しい催眠術師が主人公に催眠を（意図せず）かけてしまうというヘンテコな展開でそうしたら違和感をむしろ映画の武器に変えている。
音楽と共に身体が動きだす、不自然は承知の上で徹底的に踊らせる。演じる三吉彩花がこれまたスタイル抜群でかつキレッキレのダンスシーンをクールにこなしていくのだからたまらない。
後半はやしろ優演じる催眠術師のアシスタントとのロードムービーになり、ムロツヨシやChayなど個性的な面々との珍道中が展開される。
見ていて幸せになれるという面においては、私が今年観た映画でぶっちぎっており、 ステップを踏みながらスクリーンを後にしたくなることを保証する。
文句なしの傑作。
しかし、煽り運転のくだりはこのご時勢シャレにならんなあとヒヤヒヤした。
