ヨーク

グリーンブックのヨークのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.9
素直に面白かったなぁと思うところもあり、でもこれだけでいいのかなと思っちゃうところもありで中々に難しい映画でした。
いやもうバディもののロードムービーという点ではほとんどケチのつけようがないくらいによく出来ていて笑って泣けるいい映画だと思うんですよね。実際俺も声出して笑ったしうるっときたシーンもあった。ただまぁスパイク・リーが怒ってたみたいに白人目線で都合のいい感じ、いわゆる「白人の救世主」映画になってんじゃねえかと言われれば確かにそういう部分もあるよなと手放しで称賛するのも憚られる感じもします。別にいわゆる「白人の救世主」ものはそれ自体は全然問題はないと思うんですよ。映画ではなく現実でもそういうこともあっただろう。問題なのはそれが類型化されてある種の物語の定番として定着して偏ったイメージを植え付けてしまうことだと思うんですね。俺は。でもそれって個々の作品の出来不出来とは関係のないことだし映画産業全体が個人に与える影響まで考えて一本の映画をレヴューしなきゃいけねえのかよ、とも思います。まぁスパイク・リーは映画産業の真っただ中にいる人だし苦言を呈するというのは分かりますけどね。
さらにいうと先日俺は『ビールストリートの恋人たち』の感想で"非常に主観的であるが故にそれがそのまま観客が何を観たいのかを突き付けてくる映画"と評したのですがそれはそのまま『グリーンブック』にも言えることで、本作は白人側の視座に立って人種差別を描いた映画だともいえるでしょう。どちらかに偏りすぎるということがなければ両者からの視点はあって当然のものなのでいいんじゃないかなぁとも思いますが。
以下、雑に良かったところ。
トニーの超意識が低い食事作法。映画だからいいけど目の前でああいう食い方されたら怒るかも。油まみれの手でハンドル握るなや。いや好きなシーンなんですけど。ああいう風にピザ食いたいよね、一人のときなら。
トニーが素直に音楽を受け入れるところ。最初は明らかに黒人への偏見があったトニーだけどドクター・シャーリーのピアノは最初から素晴らしいものだと認めているんですよね。
あとこれは良くも悪くもって感じですがドクター・シャーリーのキャラが滅茶苦茶立ってるんですよね。観劇後に調べて知ったんだけどドクのキャラは結構盛ってるとか。伝記映画としてよりも作り話としての面白さを優先したんだろうけどそこは善し悪しかなと思います。
最後に一つだけ、この映画は「白人の救世主」的な部分は確かにあるんだけど最終的に作中でもっとも救われているのは黒人に対する偏見を拭うことができたトニーなんじゃないかなと思います。そこもっと強調しても良かったかな、と。
面白い映画だった。
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