～反抗期の少女が描く危うい青春、笑いの裏に潜む痛み～

ゾーイ・ドゥィッチ目当てで視聴。思っていた以上に彼女の存在で引っ張っている映画。

「Flower」は、ブライアン・シプキン監督が手がける青春ブラックコメディで、主人公エリカを演じるゾーイ・ドイッチ（「セットアップ: ウソつきは恋のはじまり」）が持ち前の明るさと毒舌を存分に発揮している。口達者で反抗的なエリカは、友達とお金稼ぎを兼ねた“ちょっと危険な”行動を繰り返すが、新たに家族になる予定の義兄ルークとの出会いを境に生活が大きく変化していく。

物語は軽妙なティーンの会話やユーモアで彩られながらも、子どもから大人へ移ろうとする若者の孤独や不安がリアルに描かれる。エリカの行動は一見突拍子もないが、その背景に潜む家族問題や自己肯定感の欠如は、観る者にちょっぴり切ない後味を残す。

おすすめのシーンは、エリカとルークが打ち解け、秘密を共有する場面。青春特有のグレーゾーンが浮き彫りになり、彼女たちの心情が繊細に映し出される。毒っ気のある笑いとほろ苦い青春が絶妙にミックスされた、異色の青春映画といえる。

早口でスラングをまくしたてるエリカという高校生と、その友達のダイアローグが可笑しい！！そもそもは予告編でこの女の子たちの会話がむちゃくちゃ面白くて、「青春ものコメディ」と思って借りてきたくらいですから。

ところが、エリカとその友達は、モラルの低い町の警官を誘い込み、エリカがおフェラをしたところをスマホで撮影して「公開するぞ！」と脅して銀行でお金を下ろさせて奪ったりする。

「売春してお金を貰う」のではなく、「未成年に平気でおフェラをさせるような大人からは、金を奪っていいんだ」というドライな考え方が今っぽいな〜と思ったのですが、それ以上に驚くのは、エリカはおフェラすることに抵抗がない。今まで金を奪った男たちのち★ぽをノートに描いて取ってある。おフェラの後は、歯磨きしてリステリンしてきれいにしているから問題ない。

しかし、ボーイフレンドもいなければ、キスもセックスもしない。クスリに溺れるのは”lame”＝カッコ悪い。

このエリカというキャラがなかなか憎めない。移動はチャリ、ファストフードやジャンクフードばっか食ってる。その割にドライで大人びたところがあるけど、内面はすごく繊細な優しいところもある。友達は大人から奪った金を服や食べ物に使うけど、エリカは、強盗で服役中のお父さんの保釈金を貯めている。

ゾーイ・ドゥイッチがこのエリカを魅力的に演じているのですが、お母さん役のキャスリン・ハーンもなかなかの好演だと思いました。

お母さんのローリーを、「男がいないとダメな母親」と言っている人も多かったのですが、エリカとタメ口をきいて、まるで友達のように仲がいいローリーはきっと、若くしてクールな彼氏にのめり込んで「できちゃった婚」をしたものの、男は犯罪を繰り返すようなだめんず。離婚してから色んな男と付き合ってきたけど続かないのは、お父さんに懐いているエリカが新しい彼氏を受け入れないから。

ローリーはもうエリカの父親のような「ちょいワル」男は懲り懲り。ダサくても大事にしてくれて、人生をやり直す機会を与えてくれるような男と幸せに暮らしたい。このローリーが「母」と「女」の間に立って感じるジレンマがリアリティあるなあ、って思った。

ローリーの彼氏のボブも、普通なのかと思ったら、18歳の薬物中毒の息子・ルークが施設から出たばかり。ルークは精神が不安定で、過食傾向もあり、すごい太っている。施設に入る前、学校の先生から性的いたずらをされたと訴えるが、虚偽と思われて捜査されなかった。

その男の先生、ウィルは、実はエリカがボーリング場で見かけるセクシーな中年男だった。

エリカとその友達は、子供に性的いたずらをする大人に仕返しをしようと、いつもの手口でウィルから金を奪おうと計画を立てる。

ここが面白くて、いつもの通りエリカがウィルを誘惑して車に乗り込み、おフェラの現場を友達が撮影する手はずだったのだが、エリカはホンキのキスをしてしまう。相手が子供にいたずらするような男だとわかっていても、魅力を感じていることは払拭できない。

ウィルもなかなか考えさせられるキャラ。やってもいない性的イタズラを男子生徒にでっち上げられて、結局何も証明されないので起訴された訳ではないが、そのせいで職は失い、奥さんにも見限られ、可愛がっていた犬も失う。小児性愛者のレッテルを貼られ、楽しみはボーリングだけ。

「子供にイタズラをするような変態」を子供が裁く！というのが冒頭では「ざまあみろ」と思うが、実際は、子供の虚偽で仕事を失う先生はとても多いらしい。特にエリカたちのような狡猾な子供達に陥れられたら、と考えさせられる。

ここからネタバレになりますので、この映画を観よう！と思った方はご注意ください。

ウィルを誤って死なせてしまったエリカとルークは、『テルマ＆ルィーズ』さながらに、車でメキシコへ逃亡を始める。途中でルークは、エリカのお父さんが収監されている刑務所により、お父さんを保釈して一緒に連れて行こうという。

このルークを演じるジョーイ・モーガンがすごいいい。セレブ臭が見事にゼロな、正直言って気持ち悪いくらいのデブなのだが、ここら辺でエリカに見せる優しさとか、映画の２/３くらいまで全く脇役だったのに急に輝いてくる。

パトカーに追いかけられてもうダメだ、というところでルークがエリカに愛の告白をするところが結構グッとくる。

ここまででも意外な展開だったのだが、ダメ押しがある。ルークは刑務所に入り、エリカが面会に行くシーンだ。

この映画は、デブで冴えないルークがエリカの愛を勝ち取り、本当のヒーローだというラストになっている。刑務所もさほどひどいところではなく、エリカは自宅で保護観察。ウィルにイタズラされた女の子たちが次々に名乗りを上げたことから、ルークの刑は軽くなるだろうということが示唆される。

最後は「ルーク❤️らぶ」みたいな、イノセントな感じで終わるのだが、ちょっとここに違和感を覚えた。ウィルが結局は子供にイタズラをしてたとしても、人が1人死んでいるのだ。ルークとエリカがお互いを見つけ、デブで冴えない男の子を輝かせたエンディングはいいんだけど、十代後半の恋愛が続くとは思えないし、エリカは父親と同じ、刑務所に入っているような男に惹かれ続けるのか？そしてこの2人は、人を1人殺したということを全く背負わないで生きるのか？それともこの映画は「子供にイタズラをするような大人は断罪されるべき」というスタンスなのか？いずれにしろかなりの異色作なので、みんながどう思うのか、感想を読んでみたい映画だと思った。

日本では公開しなかったので罪悪感に苛まれながらも最終手段、YouTube.

ゾーイがどうしても見たくて....
好みのストーリー。高校生だけど学校のシーンが数えるほどしかでなかった。

兄弟愛に溢れるお話。