chikichiki

ジョーカーのchikichikiのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.5
" 悲劇と理性。喜劇と狂気。"

噂に違わぬ衝撃作!!さらに言えば"劇薬"。

格差社会の生み出す弱者。
そして、そこに追い打ちをかける数々の悲劇が引き起こす犯罪を皮切りとし、喜劇的に描かれる悪のカリスマが誕生してく過程。
背筋も凍る恐ろしさと共に、追い詰められていく主人公アーサーの痛々しさを突きつけてくる様な作品でした。

また、新たなジョーカー像を提示した上で、過去のシリーズに深みを与えてくれる作品でもあるなと感じました。

なぜジョーカーが生まれたのか?
また、ジョーカーとバットマンはなぜ互いに惹かれ合うのかについてはかなり説得力のある物語になっていましたし、対比的に描かれるオマージュ部分の取り入れ方が非常に上手く、物語に展開を与えると共に深みを与えていて、無駄なシーンがない。

脚本、映像、場面ごとの音楽の使い方など、単純に映画として非常にクオリティの高い作品だなと思いました。

個人的には、キャラクター達の脚元(履物)を映すことで、それぞれの生活水準の格差を表すなどの豊富なアイデアやチャップリン的な悲劇と喜劇に対する視点の置き方、また、あのシーンでクリームの「ホワイト・ルーム」を流すセンスがとっても好きでした。

そして、なんと言っても主人公アーサーを演じたホアキン・フェニックスの怪演!!
というか凄まじ過ぎて、怪演という言葉ですら軽く感じてしまう…
なんというのでしょうか、役作りを含めた表情の作り方や台詞回しなどの演技が役にハマっているのは勿論、体の歪みやダンスシーンなどの身体表現が特に◎

さらに、あの役所にロバート・デ・ニーロを持ってくるというのもお見事なキャスティングでした!!

本作は『キング・オブ・コメディ』や、チャップリン作品、また『タクシードライバー』などの70年代クライム作品などを知っているとより深みの増す作品ではあるとは思いますが、むしろ予備知識を持たずに鑑賞した方が本作の持つ、シンプル故の揺るぎなさや力良さを素直に楽しめるかなーとは思います。

ただ、やはり過去のバットマンシリーズ(その他のジョーカーが登場する作品を含めて)観ておいた方が良いかなとも思います。
これは勿論、物語の筋が入って来やすい。ということもありますが、過去のシリーズでは細かい設定の違い等によって、それぞれのジョーカー像が存在し、それがイコール本作における"誰もがジョーカーに成り得る"というスタンスともマッチしていると個人的には思うので…

シンプルなストーリーで展開しながらも、様々な角度・視点で捉えるのことの出来る、多面的かつ、重層的な作りの作品でもあると思うので、一度で無理に理解しようとせずにある程度視点や捉え方を絞りながら繰り返し鑑賞するのが一番かなと思います!!
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