小

長いお別れの小のレビュー・感想・評価

長いお別れ(2019年製作の映画)
4.0
『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督の新作なら観ないわけにはいかないでしょ、という感じで鑑賞。個人と家族を対比し、認知症の父に家族一人一人が向き合う姿を通じ、家族ってこういうことじゃないのという世界観を示すような作品だったかな。

で、その世界観は何かというと、話は全然違うけれど、コミック『黒子のバスケ』の誠凛高校V.S.陽泉高校の回での木吉先輩のモノローグと同じじゃないかと(引用はアニメ動画より)。

<チームがあって一人一人が支えているわけじゃなく、一人一人が支え合ってはじめてできるもの、それがチーム。(木吉鉄平)> この「チーム」は「家族」に言い換えられるだろう。

戦後民主主義教育により自分の世代には個人主義的な価値観が浸透しているように思うけれど、それが家族をどこかよそよそしいものにしているのかもしれない。

登場人物を、あえて単純化して「個人」(木吉先輩のモノローグの前者)か「家族」(同後者)のどっちに寄っているかをわけてみると、次女(蒼井優)、長女(竹内結子)、長女の夫(北村有起哉)は個人側である一方、母(松原智恵子)は家族側じゃないかな。父(山崎努)と孫(長女の息子)はラストの方でどちら側かが明らかになる感じ。

またメタファーとしては、円錐形の帽子は家族で英語は個人という感じ。自分的には長女の夫のようなことを思っているかもしれず、ちょっとヤバいかな、という気がする。

"オレ"が家族を支えているのではなく、皆で支えあってはじめて家族ができる。わかりやすく説教くさい感じになってしまいそうな内容で、劇的な感動をとてもうまく演出した前作に比べれば派手さはないけれど、役者さんが実力者ぞろいだからか飽きなかった。女優さんたちが醸し出す家族の雰囲気がいかにもありそうという感じで、時に可笑しかったし、なんと言っても山崎勉さんの表情が秀逸だった。

多分、監督が一番伝えたいであろう、この映画の孫の世代の人は家族についてどう思っているのかしら。「黒バス」読んで、アニメも観ている娘は家族側、かな?
小