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ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREYのbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
DCEU(DC・エクステンデッド・ユニバース)第8作

『マン・オブ・スティール』から始まったDCEU。
着実に作品を送り出し、本作が8作目となりました。
書き起こして驚きました。8作目ですか。
DC映画好きとして、割としょっちゅうユニバース作品を見ておりますが、意外と数があるんですね。認識しておりませんでした……。

どうでもいいことはさておき、本作の率直な感想。
「どこを向いている作品なのか分からず、見ていて困惑する」

〈女性監督・女性スタッフの手で、女性ヴィランの活躍を描く〉という構図はわかります。
わかりますが、物語そのものが何を描き、何を売りにしたいのかが伝わりません。
製作背景を売りにするのは、〈それしか売りがない=中身空っぽ〉と同義に見えかねませんが、本作はまさにそれ。

もうちょっと、作品の中身に触れつつ、魅力を考えてみましょう。

①女性によるアクションシーンでしょうか?
いえ、アクションは、正直かなりお粗末。
功夫アクションの要素を加えて構築されたようですが、カメラワークがモッサリしておりスピード感と迫力に欠け、演者のアクションそのものも重み・スピード感がなく、かなり微妙な仕上がりです。


②ストーリーテリングでしょうか?
いえ、クロスカッティングによる複数人同時進行や、過去の回想との並行展開は、ハッキリ言ってありふれた作りです。
その上、話の切れ目やシークエンスのまとまりが悪く、気分がノってきたタイミングでぶつ切りにされるようで、かなり微妙な演出だったと感じています。


③登場人物の魅力でしょうか?
ハーレイの別れ、唐突でしたね。
特に理由も触れず、〈傷心→解放→別離〉を積み重ねられたので、彼女の覚醒までのカタルシスが物足りません。
他の女性陣については、尺の長さがそもそも足りないため、魅力のアピール不足感は否めません。
比較的時間を割いて説明されていたハントレス(クロスボウ・キラー)については、〈メキシコを舞台にしたB級リベンジ映画の主人公〉くらいの内容なので、どうも役不足……(逆にわかりやすいティピカルさがあったことは、良かったのかもしれません)。

女刑事、歌姫、スリ少女については、スーパーヒーロー世界の等身大の人間という試みは面白かったですが、やはりどうしてもパンチにかけます。
しかも、歌姫は最後にスーパーパワー(?)をドカンと使ってしまうので(話の途中で既に示されていましたが、こんなに破壊力があるとは思いもよりませんでした)、ノーマルな人間枠から外れてしまいます。折角の差別化が……。

このように、「普通の人間が、超常能力等を用いず、人間として闘う姿を見せる」という構図で進むと思っていたところ、アッサリとひっくり返されてしまったこともあり、登場人物が魅力的なんだ!という見方は、最後までマッチしませんでした。
そのため、登場人物の魅力という点では、どのキャラも惜しいところ止まりだったなぁというのが本音です。


④冒頭触れていますが、主人公・その他登場人物、監督・脚本等の制作者サイド、作品に関わる全てについて、女性が中核を担うという試みについてでしょうか?
コレは素晴らしい試みだったと思います。
思いますが、それが映画の出来栄えに現れきれておりません。それに、作品自体が放つ魅力要素ではありません。

『ワンダー・ウーマン』にて、パティ・ジェンキンス監督が完成度の高い映画を世に送り出した後とあっては、尚更お粗末な仕上がりと思わざるを得ません。
映画制作の背景を加味した上で作品を見るという「忖度して見ろ!」という姿勢は、大変に押し付けがましい上に、評論家でもない我々一般人には厳しいものがあります。
個人的には、そのような社会の変化やリテラシー踏まえて見るよう努力しているつもりですが、それを前提とされるのは、ちょっと辛いものが……。


カラフルでサイケデリックな色彩、ハーレイの理知的なのに支離滅裂という二面性を描く、といった点は好みでしたが、魅力皆無な悪役(ブラック・マスク=ユアン・マクレガー演)がそれらを覆い隠すほど酷いもので、なんだかゲンナリ。
部分的に見ると良い点が散見されるのに、結局総合的に見て微妙……。

以上が、本作初鑑賞時点での印象です。
結局の所、本作はそこそこ、というかかなり、面白くない映画だと思いました。
今後他のDCEU作品同様、2回3回4回……と繰り返し見ていくことで、作品の魅力をより深く理解していくことができれば、評価が変動するやもしれませんが、それは未来の自分にお任せしたいと思います。
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