140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREYの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

3.6
【脱パラサイト?】

冒頭のアニメーションでサラッと見せるハーレイクインの生い立ちを軸として見ると、底辺から這い上がって悪に落ちるというジェットコースター人生を、トッド・フィリップスの「ジョーカー」のようや“かまってちゃん“思考で描かず、時系列と話の進行方向がハーレイクインと同じく情緒の安定性を欠いていればこそ作品としての厚みになると思う。しかしながら興を削いだ部分は否めない。

言ってしまえば、冒頭のアニメーションは「パラサイト 半地下の家族」のラストで示された底辺から上を目指す思考であり、計画破綻の悪夢を強い酒を飲ませて散漫に敢えてさせているように思える。ハーレイクイン=ジョーカーの彼女というパラサイト性から脱すること、警察という組織から脱すること、自分の忌まわしい宿命から脱して笑うこと、籠の鳥は放たれ、家庭の不和から新たなファミリーを見つけること。それぞれが脱パラサイト化=女性の自立と引っかけて作品の歩みを進めているのは興味深いし、現実世界のウーマンリブ運動によって企画書が通りやすいご時世に第4の壁の向こうの視点でパラサイトしているようで皮肉的でもある。

ストーリーが情緒不安でアクションのキレ味の良さとマッチしていない感は否めず単純な打撃的な攻防でなく柔のアクションにスパイスを効かせているところを作品のテンションとマッチさせて欲しかった。

ラストの道化師として全うしたバディムービーのリスタート性はあるが、キャラの濃さがクロスボウ女に出し抜かれて一気にキュート値がそっちに触れてしまったのでやや散漫な気もする。