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ストレイ・ドッグのbluemomday0105のレビュー・感想・評価

ストレイ・ドッグ(2018年製作の映画)
3.8
かつて任務を任された潜入捜査で失態を犯し相棒を亡くした女刑事エリン・ベル。夫とは離婚、娘とは離れ離れ、上司や同僚には疎まれ死んだように生きるエリンのもとにある封書が届く。同封されたインクじみのついた100ドル札を見た彼女は、かつての潜入捜査のターゲットであり取り逃したサイラスがもどってきたことを悟る。失った過去と誇りを取り戻すべく、エリンのたったひとりの追跡が始まる。

「ニコール・キッドマンのしくじり人生」的な転落と最後のあがきを見せるエリンはこれまでの美貌からすれば嘘みたいな容貌。皺だらけの顔、ボサボサの髪、常に険しい表情。絶望を体現したようなビジュアルやしばしば血塗れになったり暴力を受ける姿。
そしてこちらが特殊メイク込みで、回想時の20代の姿のがいじり度少ないのはすごいな…アクアマンもCGかと思うくらい若かったが、あまり直してないのかも。

エリンがぶち当たる状況はけして彼女の罪だけでなく、ある程度の年齢に達した女性に共通するものであり、それは「82年生まれ、キム・ジヨン」などでも露呈していた、ずっと解決できない課題(いや、社会的には中年女性なんてどうでもいいんでしょうが…)も関係してるのが身に覚えありすぎてつらいし、そもそもの虐待家庭で育った彼女が警察という男性社会に身を置くにつれ、全部覆水に返したいと思うに至ったのかもしれない。それはサイラスにどれだけ尽くしても、若い女性に取って替わられるペドラも同様。

ラスト、救済はそこしかなかったのかな…とか世界のどこかに中年女性に優しい国ってないかなとかなかなか辛くなってしまった。
ただエリンがあんなに大切にしてるように見えた娘も、エリンを現実に引き戻すことができなかったし、独りよがりで生きてた彼女にふさわしい結末であったと思うとともに、自分もこうなってしまうのかなという恐ろしさも感じる。

ともあれやさぐれたニコールの演技なかなかよかったです。確か賞獲得してたはずですがわかる…!目当てのセバスチャン・スタンはスキンフェードのいかつい髪型の割に映画の良心とも言える存在だったから、ファンの方はぜひ見ていただきたい。「オデッセイ」のペックや「幸せをつかむ歌」のジョシュくらい善性の、おしりを褒められる夢の男でした。
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