河豚川ポンズ

ジェミニマンの河豚川ポンズのレビュー・感想・評価

ジェミニマン(2019年製作の映画)
3.9
いろいろ冒険が過ぎるアクション映画。
ストーリーは陳腐だけど、アクションと映像は今まで見たことないものを見せようという気概が感じられて、個人的に大好きです。


国家への脅威となる存在を秘密裏に抹殺してきた伝説の暗殺者ヘンリー・ブローガン(ウィル・スミス)。
そんな彼も老いには勝てず、以前から自分の仕事に疑問を持ちながら続けてきたこともあり、とあるテロリストの暗殺を機に引退の決意をする。
引退を伝える上で、船上生活をしている旧友のジャック・ウィリス(ダグラス・ホッジ)に会ったヘンリーは、以前自分が暗殺したテロリストとされていた男が実は暗殺者ではなく分子生物学者であったことを知らされる。
何が何だか分からないヘンリーにジャックは、ブダペストの情報屋に会いに行けと助言する。
話も終わり船が岸に戻る途中、盗聴器がボートに仕掛けられていたことに気づいたジャックは、ボート小屋の受付をしていたダニー・ザカウスキー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)が何らかのエージェントだと気づく。
すぐさま問いただすと、彼女はアメリカ国防情報局”DIA”の局員であり、引退後のジャックとヘンリーの監視をしていたのだった。
しかしダニーもFBIに勤めていた自身の父親の消息を追い続けていることから組織に不信を感じており、ヘンリーの暗殺に関しても分からないながらに協力する姿勢を見せる。
その夜、ヘンリーたちのもとに暗殺チームが送り込まれ、ジャックは殺されてしまう。
いち早く襲撃に気づいたヘンリーはこの襲撃に関して何も知らないダニーと共に暗殺者たちを何とか振り切り、同じく旧友であるバロン(ベネディクト・ウォン)に会いにコロンビアへと向かうのだった。


まさかのウィル・スミスVSウィル・スミスが実現!
これほど期待に心躍るような広告宣伝があるだろうか。
まあ、こんなので喜んで劇場に向かうのはそれこそ少数派だろうけど、自分としては映画に向かう理由としては十分すぎるくらい。
そして想像通り、実際見てみてもこれ以上のストーリーがないので、ストーリーテリングの上手さを期待して観に行くものじゃない。
設定においても「自分のDNAから生まれたクローンが…」ってアクション映画は「シックス・デイ」「レプリカント」と、特別真新しい要素はない。
じゃあ何がすごいのさって言うと、やっぱり映像技術とそれによって生まれる映像の迫力。
残念ながら自分は観ることは出来なかったけど、映画館によっては『3D+in HFR(ハイフレームレート)』という、超超高画質の映像規格で撮影され、観ることが出来るというのが大きな売り。
実際見てないのでどうすごいのか分からないけど、劇中のアクションはそれを活かすためかのようにハイスピードな展開が繰り広げられる。
町中でのカーチェイスは結構な時間が割かれる中、すごく見ごたえがあって、これが120fpsでヌルヌル大画面で見られるのかと想像したら、確かにすごそう。
さすが製作キャストにジェリー・ブラッカイマーが名を連ねるだけのことはある。
もうこの名前見るだけで安心すら覚えるようになってきた。
映像が実験的ならアクションも実験的で、傾斜ハイブリッドのマウントサイトやコーナーショット、ドラゴンブレス弾とあんまり他のアクション映画では見ないような銃器も出てきたりしてて、個人的にはそういうところでもテンションが上がった。
監督のアン・リーはこういうアクションを撮るイメージは無かったけど、作品リストを見てみると映像にすごく凝る人みたい。
自分の考える映像美を考えていく過程でこういうアクションを撮ろうということになったんだろうか。

その考えは若いウィル・スミスの作成(?)にも表れていて、さすがにCGを使ったといっても劇中はびっくりするくらい違和感がなかった。
ウィル・スミスの若い頃なんだから、そりゃあ中の人もウィル・スミスが務めればウィル・スミス以上にウィル・スミスだろうというのは当然の帰結なんだけど、それでもスクリーン上には間違いなくそこに存在するものとして感じられる。
「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の時のレイア姫やターキン総督の時もびっくりしたけど、こっちはド派手にアクションもしてることも考えると数段上のように感じる。
こういうの見せられてしまうと将来ハリウッドスターとか有名人の死後の在り方ってのは『AI美空ひばり』みたく大きく変わっていきそうな気がするね。

なんにせよ、この映画が出てくるのがあと10~20年早いか、脚本がもう1,2捻りくらいあれば、と思ってしまうなあ。