東大卒ながらニートとなってしまった主人公・和彦が、偶然再会した同級生・百合のすすめで銭湯で働くことになる。しかし、街の素朴な風呂屋、といういで立ちのその銭湯は深夜に「ヤクザ絡みの死体処理」を行う闇を抱えたお店で、現場を見てしまった和彦はその業務に関わることになってしまう…という、モラトリアムな日常と男の成長物語に死体をぽんと置くことで急に穏やかではない物騒な香りが漂うことになった作品です。
主演の皆川暢二（本来はかなり男前の方でした）の絶妙な「軸がなく、覇気もなく、展望もなく、うだつの上がらないダメ男」感が素晴らしくて、同じくダメな人生を送ってきた（かなしい）身としてはかなり突き刺さるものがあります…ものすごく地味なんですけど、地味ゆえの描写のハードさが刺さってくるんですよね。当たり前のようにそこにある裏の仕事によって居場所とお金と変な自信を得てしまったがゆえに進みすぎてしまい後戻りできなくなっていくところも、生々しいです。
雑に言ってしまうとこの作品は「ニートの社会復帰」を追いかけるだけの作品なんですけど（雑すぎる）そこに「死体処理の仕事」をエッセンスとして加えるだけでこんな不思議な軌道を描くのか…という感じです。男の覚醒を促す刺激として十分すぎる。メランコリック（憂鬱）を抱えた物語を経て一皮むけた和彦を是非見届けてほしい…
そして何よりも、この作品のヒロインである百合ちゃんがものすごく、そりゃもうかわいらしいんですよ。和彦くんはこの子を幸せにしないとぼくは許さないよ。わかってるんですか
